台湾で活躍する「運ちゃん」。

7月 7th, 2014 | Posted by xiaofan in 小ネタ - (台湾で活躍する「運ちゃん」。 はコメントを受け付けていません)

大家好! xiaofanです。連日 35 度を越える台北では、午後になると急に暗くなり、ひと雨ざーっと降る日が増えてきました。ゲリラ豪雨と言えそうですが、どうやら台湾では結構よくあることのよう。たいてい店の軒先がぐっと伸びているので、雨宿りする姿をよく見かけます。こんなに連日雨が降るのに、傘を持ち歩かない人もいるのがなんだか不思議です。

さて、台湾はすっかり夏の装いですが、日本もそろそろ夏休みの相談をしている人もいるのでは? 街中では色とりどりのマンゴーがどっさり売られる季節に入った台湾で、マンゴーを食べに行きたい!と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。旅には役立たないかもしれないけれど、移動にまつわる豆知識をお届けします。

台湾、特に台北近郊の観光であれば、割と気軽に利用できるであろう交通機関に、MRT(市内鉄道)タクシーがあげられます。
※ 以前、ご紹介した MRT の関連記事はこちら

MRT は、東京近郊の鉄道網と比べると、路線はぐっと理解しやすく、アジアでスカイツリーの次に高いタワーを誇る台北 101 や、縁結びの神様で有名な龍山寺、おしゃれの街・永康街、夜市で賑わう士林をはじめ、主要な観光地は網羅されていますから、現地に着いたらすぐにアシとして利用できるのではないでしょうか。運賃は、台湾ドル 20 元(約 60 円)からで、デポジットを払えば Suica や PASMO のような IC カード(悠遊卡 = 悠遊カード・ゆうゆうカード)を購入できます。悠遊卡を使えば、MRT だけでなく市内のバスなどまとめて、小銭に煩わされることなく移動ができます。

日本では「いや、初乗り 700 円もするようじゃ、ちょっと…」と敬遠しがちなタクシーですが、台湾では初乗り台湾ドル 70 元(約 210 円)という金額で、日本に比べればずっと気軽に乗ることができます。車によって行灯は異なりますが、タクシーはすべて山吹色で、夜でも遠くからでもはっきりと見分けることができます。また、漢字圏の台湾では、行き先を漢字で書いて運転手さんに見せれば連れて行ってもらえる、という点もやや気楽。区画整理の行き届いた街づくりがされているので、大きな通りを押さえれば場所も理解しやすい、というのが旅行者にとっても有り難い点です。

ワタクシ、初の台湾旅行で、台北市内に長年住む友人宅を訪ねるためにタクシーを利用した際に友人と住所や行き方をやりとりしていたら、「運ちゃんに A 路と B 路、っていえばわかりますから。あ、運ちゃんって言って大丈夫ですからね!」と言われました。そうなのです、台湾ではタクシー運転手のことを運ちゃんと呼ぶのです。

『台灣人也不知道的 台式國語』(曹銘宗著、貓頭鷹出版、日本未刊行)という本(タイトルの意味は「台湾人も知らない台湾式国語」)によれば、繁体字では運將と書き、「日本統治時代に使われはじめた」とあります。1895 年から 1945 年までの 50 年という間、台湾は日本だった時代があります。その間、台湾では公用語として日本語が使われていました。そのため、人々の暮らしの中に根づき、今なお使われているものが多くあるのです。「運ちゃん」のほかにも、歐吉桑(おじさん)、歐巴桑(おばさん)なんてのも紹介されています。ちなみに当該の項には、この 2 語は「年寄り扱いする意味が含まれているので、親戚などでない限りは相手に失礼だと思わせる可能性があるので使わぬほうがよい」とあります。

話を「運ちゃん」に戻します。この本の「運ちゃん」の項は、「おもしろいことに、台湾式国語の『運ちゃん』という言い方はだんだんと一般に使われるようになったのに対し、日本では 1990 年代以降、あまり使われなくなってきた。理由は、後輩や子どもを呼ぶ際に使う『ちゃん』という呼称で、場合によっては運転手を軽視する意味を含んでしまうからだ」と続けられています。確かに、第三者同士で話していて口にすることはあっても、運転手さん本人に「あ、運ちゃん、そこ曲がってください」なんて言いませんね。そして、この項目はこう結ばれています。「日本ではすでに使われなくなった『運ちゃん』という語は、台湾で新しい命を得たのである」と。ううむ。は、「将軍」や「大将」のなので、軽視されている呼び方だとは認識されていないのかもしれないですね。

確かに、台湾で暮らしていると、台湾で独自に進化した語に出逢うことが多々あります。「運ちゃん」はそのうちのひとつに過ぎません。ほかにもいろいろあるので、また機会を改めてご紹介していきます。あ、この夏、もし台湾旅行を考えているなら、折りたたみ傘をお持ちください。きっと役に立つと思いますよ!

繁体字どころ台湾から xiaofan でした。再見囉~!

photo : “I Don’t Want To Get Out Of The Taxi In This Weather” by Alex Watson

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X 世代(Generation X)や Y 世代、Z 世代とは誰のこと?

7月 4th, 2014 | Posted by maggy in 小ネタ - (X 世代(Generation X)や Y 世代、Z 世代とは誰のこと? はコメントを受け付けていません)

'next generation

こんにちは、maggy です。最近、ベストセラーのビジネス書 WORK SHIFT を読みました。和訳版は『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』(プレジデント社、2012)ですね。

著者はロンドン・ビジネススクール教授で経営組織論の世界的権威であるリンダ・グラットン(Lynda Gratton)さん。翻訳者は池村千秋(Chiaki Ikemura)さんです。2025 年の働き方の未来を、今起きているテクノロジー革新、グローバリゼーション、地球変動といった多角的なファクターから紐解いていく名著です。

さて、本書における 2010 年の欧米社会の働き方を世代別に考察する箇所で気になったのが Generation X(X 世代)、Generation Y(Y 世代)、そして Generation Z(Z 世代)という言葉です。

具体的には、現代社会の人口が、以下の 5 つに世代に分けられていました。

Traditionalist(伝統主義者世代) = 1928 – 45 年ごろの生まれ
Baby boomers(ベビーブーム世代) = 1945 – 64 年ごろの生まれ
Generation X(X 世代) = 1965 – 80 年ごろの生まれ
Generation Y(Y 世代) = 1980 – 95 年ごろの生まれ
Generation Z(Z 世代) = 1995 年以降の生まれ

この X、Y、Z 世代という言葉は、マーケテティングの本やニュースでもたびたび見かけまして、どうしてこう呼ばれるのか気になっていました。調べてみたところ、こんな歴史があることが分かりました。

なじみのない単語が並ぶ英語のビジネス文書に困ったときは…………
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まず「Generation X」を最初に使ったのは、ハンガリー人の世界的に有名な写真家のロバート・キャパ(Robert Capa/フランス語読みではアンドレ・フリードマン)さんで、 1950 年代初頭のことだとか。第二次世界大戦後に成長した若者らをテーマにしたフォトエッセイのタイトルに、(当時の人達にとって)未知の新しい世代という意味で使ったそう。これが次第に、人口統計学やマーケティングの用語としても広がっていったようです(詳しくは Generation X – Wikipedia, the free encyclopedia などをご覧ください)。

この定義に続く形で登場したのが、Generation Y(Y 世代)や Generation Z(Z 世代)というわけです。なお、Y 世代、つまり 1980 年代から 1990 年代に生まれた世代のことを、Millennial Generation(ミレニアル世代)、Millennials(ミレニアルズ)とも呼ぶそうです。これは特に 1990 年代半ばから 2000年(ミレニアル)にインターネットが急速に普及し、それまでの世代に比べてデジタル化に慣れ親しんだ価値観やライフスタイルを持つ世代、という文脈で使われるそう。

省略して Gen XGen Y、その世代の人達のことを Gen XersGen Yers とも呼ぶそうです。こうして言葉で世代を区切っていくと、社会やライフスタイルの特徴が見えてきて興味深いですね。

個人的には、Z 世代の次を一体どう名付けるのか気になります。「やっぱり Z の次と言えば、 GT 世代かしらね」と思いましたが、これは Y 世代の日本人とアニメ好きな外国人にしか理解できないネタですかね、すみません。

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photo : “next generation” by Martin Abegglen


日本の携帯市場も SIM ロック解除が義務化!ちょっとオタクな楽しみ

6月 30th, 2014 | Posted by maggy in 小ネタ - (日本の携帯市場も SIM ロック解除が義務化!ちょっとオタクな楽しみ はコメントを受け付けていません)

'Frankenstein' by Richard Eriksson

こんにちは、maggy です。総務省は携帯電話会社が端末を他社で使えないように制限する「SIM ロック」の解除を、2015 年度にも義務づける方針を固めたそうですね(ニュース記事)。

この話題に馴染みのない方のために、少しだけご説明します。携帯電話は、端末機器に、SIM カードという、電話番号など利用者の情報を書き込んだ IC カードを差し込んで動くようになっています。日本の場合、その SIM カードには、docomo、au、Softbank などのキャリアが紐付いています。このページの写真で言えば、中央に置かれている金色の小さな部品です。

欧州や韓国などでは、利用者が端末から SIM カードを自由に抜き差しできるようになっています。つまり、スマートフォンを A 社で購入し、A 社の回線を使っていたが、B 社がもっとお得な回線プランを提供したので、B 社から SIM を買い、端末はそのままで、回線を乗り換える……といったことができます。この状態を SIM フリーと呼びます。日本では、SIM の交換はできず、SIM ロックと呼び、キャリアの変更はできません。SIM フリーであれば、SIM の変更により、キャリアの変更は可能ですし、他の国に行った際には、端末は買わずに、行き先の国に対応した SIM カードを差し込めば携帯電話が使えるようになります。

海外に住んだことのある人や海外旅行・出張に頻繁に出かける人には、この話題に馴染みがあるのではないでしょうか。私もイギリスに留学したとき、携帯電話という文明の利器の中には、SIM カードなる心臓が埋め込まれていることを知りました。節約しようと、どの業者の端末が最も安くて良いものか、そして SIM カードはどこが一番お得か、徹底的に比較しました。そして端末の裏を開けて SIM カードを抜き差ししていると、語学だけでなくテクノロジーにも強くなった気がして、ちょっとオタクな達成感を得ました。

逆に SIM ロック では、端末から SIM カードを交換できないようにしてある状態で、これまで日本の業者の携帯電話が、大方このスタイルだったわけです。

否応なしにセットにされているので、利用者側に自由に価格やサービスを比較する機会が少なかったのです。今回の SIM ロック解除の義務化で、競争が激しくなり価格やサービスがより自由化したらいいですね。利用者側も比較の目を光らせていきましょう。

環境にも良い効果があるのではないでしょうか。例えば私は現在、海外の携帯電話と日本の携帯電話を 2 つ持っています。これが SIM カードだけ取り替えてもいいのなら、端末は 1 つで済むはずです。

レアアースがどうのこうのと騒いだ割に、端末をなるべく買わせるようなモデルにしがみついているようでは、資源の無駄遣い。地球の未来が危ないかも?
※ 実際には、SIM ロックのおかげで端末が安く買えるというメリットもあったりするのですが、あとで通信料にオンされて、結局どうなんだ?という印象もあります

これまでの日本の携帯電話のガラパゴス化は海外からの訪日者にも不評だったようで、使い慣れた端末を使いたかった人も多いでしょう。

いずれにせよ、日本と海外への行き来の際に、あの端末の裏を開けて SIM カードを差し替える、ちょっとオタクな瞬間が楽しみだったりします。

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photo : “Taking out the iPhone 4 SIM card” by Richard Eriksson


「ペキン」はどこ?中国語地名の日本語読み方が中国現地で通じない?

6月 25th, 2014 | Posted by Stella in 小ネタ - (「ペキン」はどこ?中国語地名の日本語読み方が中国現地で通じない? はコメントを受け付けていません)

'The Infinity of China' by Trey Ratcliff

こんにちは、Stellaです。中国は、その国土の広さについてはみなさんもご存じでしょう。その国土は、23 の省、5 つの自治区、4 つの直轄市、2 つの特別行政区に分けられ、合計 34 の行政区で構成されています。さらに、各省と自治区の下で市が何十も存在しています。日本人がこれらすべての地名を正しく読むのは中国通であってもかなり難しそうです。

'Melbourne Airport' by Christoper

北京ペキン)や上海シャンハイ)であれば、多くの方の回答は「知っています!」となるでしょうね。しかし、「ペキンに行ってみたい!」と、中国人に言っても……、「えっ?どこですか?」となってしまうかも?中国人でも日本語を学習したことがある人であればそんなこともないでしょうけど、中国からの単なる観光客だったりすると「えっ?どこですか?」となってしまうかもしれません。

中国人にとっては、「ペキン」という街は存在しないのです。北京の正しい読み方は bĕi jīng(ベイジン)なのです。ちなみに、英語の場合では、正しい発音に従って、Beijing と綴られます。空港の行先表示で見たことがあるかもしれませんね。

大連(だいれん)は dà lián(dài lián)なので、日本語とかなり近いのですが、そうした地名は非常に少ないのが実情です。例えば、

天津てんしん) → tiān jīn ≒ ティエンジン(英語 : Tianjin)

済南さいなん) → jì nán ≒ ジーナン(英語表記 : Jinan)

となります。

それぞれの地名には、それぞれの歴史があります。中国の歴史の中で、地名が何回も変更されたところもあります。例えば、北京は、戦国時代に「戦国の七雄」(戦国七大国 : 韓、魏、趙、斉、燕、楚、秦)がありましたが、現在の北京は当時は燕国の首都。「」と呼ばれていました。時代が下って、現在では北京と呼ばれるわけですが、途中経過をまとめてみると……

(A.D. 916 – 1125) : 燕京
(A.D. 1115 – 1234) : 中都
(A.D. 1271- 1368) : 大都
(A.D. 1368 – 1644) : 北平北京

明の第三代皇帝・永楽帝が即位した後まもなく、反対勢力を徹底的に弾圧するために「北平」を「北京」と改称し、首都を「南京」から「北京」に遷都しました。これが歴史的に有名な「永楽遷都」です。これ以降、現在に至るまで「北京」と呼ばれています(厳密には、中華民国時代、中華人民共和国時代に北平と北京の間で何度か改称されています)。

また、永楽遷都のすこし前に朱棣(後の永楽帝)が皇帝の座を奪うために、当時の首都としての南京に住んでいる自分の甥(建文帝)に戦を仕掛けました。そのときに、朱棣(永楽帝)の軍がある場所に集結しました。その場所を記念するために、後に「天津」という名前を付けたのです。本物の「天子」( = 皇帝)が渡った「」( = 港)ということで、「天津」と命名したのだそうです。中国には、こんな歴史上の政変と関係のある地名は多いのですが、これは全世界共通かもしれませんね。

もうすこし、詳しく中国の地名(住所)を見てみましょう。日本の区や市、町のような街区区分があります。北京であれば、「東城区」、「西城区」、「朝陽区」などの「」( = 区)があり、「崇文门外街道」、「前门街道」、「永定门外街道」などの「街道」( = 町)があり、さらに「花市大街」、「前门大街」、「建外大街」などの「大街」( = 丁)があります。日本とはすこし違う部分もありますが、なかなか興味深いシステムです。

そう言えば、以前日本人の友だちにこんなことを聞かれました。「ねぇねぇ、コーシュー(広州)とコーシュー(杭州)は違う場所?」。中国人の私にとっては、

広州コウシュウ) → guǎng zhōu ≒ グアンヂョウ(英語表記 : Guangzhou)

抗州コウシュウ) → háng zhōu ≒ ハンヂョウ(英語表記 : Hangzhou)

……なので、まったく別の地名です!日本語では、漢字の音読みと訓読みがありますよね。音読みは中国伝来の音に近いものとされていますが、そのころの読み方は現代中国語とはかけ離れたものであったに違いありません。中国人の私が日本語を勉強したときには、「どうして漢字 1 文字にこんなににいろんな読み方があるの?!」(訓読みだけでも大変なのに、音読みも何種類もあったりする!)と思いましたが、逆に日本人はその音読みにひきずられて、本来の現代中国語の音は想像しにくいのだろうな……と感じました。でも、漢字を通じて「なんとなく」のレベルだけど、コミュニケーションが取れるのはいいことかもしれません。英語圏の人は、地名に関しては、英語表記が現代中国語にかなり近いので、ほぼ正しい地名を発音できます(細かいことを言えば、イントネーション – 声調 – が違ってたりしますが、まあ OK です)が、漢字になると難易度が高まるんですよね。

このブログで何回かご紹介していますが、中国語の発音は、日本語の音読みとはかなり(まったく?)違います。なので、地名だけではなく、中国の人名も日本で独自の読み方で呼ばれており、中国語の発音とはまったく違います。「もうたくとう(毛沢東)で通じる人が中国人にいるとすれば、恐らく日本で暮らしたことがある、または日本語に通じている人でしょう。「毛沢東」は、「マオ・ツートン」(Máo Zédōng / 英語表記 : Mao Tse-tung)です。日本に住んでいる毛さんは、きっとまわりの人から「モウさん、モウさん」と呼ばれているんでしょうね。最初は違和感があっても、聞き慣れてしまいますので、逆に中国に戻ったとき Mao と呼びかけられても自分のことだと気付かないなんてこともあるかも(恥ずかしい話、わたしにもありました……)。

小泉元首相は、いまだに韓国の「金」という姓を「きん」と呼んでいます。金大中は、現在ならば「キム・デジュン」ですが、昔ならば「きんだいちゅう」。1984 年まではそれが当たり前でした。それが 1984 年に当時の全斗煥(「ぜんとかん」改め「チョン・ドゥファン」)大統領との取り決めにより、現地の音韻に近い呼び方をするように改めたようです。しかし、中国に関しては、1972 年の田中角栄の日中国交回復の会談のときに、日中両国の人名は、おたがいの国での読み方を続けることで合意したそうです。なので、日本では、周恩来はいまだに「しゅうおんらい」であり、Zhōu Ēnlái(英語表記 : Chou En-lai)ではないのですね。

おまけ : 今回使わせていただいた写真は、中国雲南省の麗江市の風景。世界遺産にも認定されている美しい街並みですが、この「麗江」(日本では、「れいこう」)も「リージャン」(英語表記 : Lijiang)。読めますか?

photo : “The Infinity of China” by Trey Ratcliff


実はロマンチック。メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』―生命科学と言語

6月 23rd, 2014 | Posted by maggy in 小ネタ - (実はロマンチック。メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』―生命科学と言語 はコメントを受け付けていません)

'Frankenstein' by wikipedia

こんにちは、maggy です。なんとなくイギリス文学の『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』(Frankenstein: or The Modern Prometheus、メアリー・シェリー作、1818 年)を手に取りました。

「フランケンシュタイン」のお話について、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。わたしも「確か、天才博士が人間を創ろうとして、顔がツギハギの怪物を創り出してしまったんだっけ?」という、極めて大雑把なあらすじくらいなら知っていました。

原作に挑戦してみたのは、生命科学というテーマについて少し考えてみたかったから。そして、文学翻訳家の友人が「あれは SF でもホラーでもなくて、ロマンチックな小説だよ」と言っていたのが気になっていたからです。

さて、これが今というタイミングに読んでみたところ、興味深い発見が大きく 3 つありました。

発見① 「フランケンシュタイン」とは、あの怪物を作った博士の名前であって、怪物の名前ではなかった

ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。私は「フランケンシュタイン」とは、あのツギハギの怪物のことだと思っていたのですが、実は主人公の博士、ヴィクター・フランケンシュタイン(Victor Frankenstein)の名前だったのですね。

解説しますと、フランケンシュタインは人間の生命の神秘を暴くという魅惑に取り憑かれて、墓から人間の死体をつなぎ合わせて、ひきこもって、狂ったかのように研究に没頭しました。そうして造られた人間は、名前すら付けらてもらっておらず、本書のなかではただ「怪物(monster)」と呼ばれています。

フランケンシュタインと怪物の名前を混同するという私の勘違いがどこから来たのか―映画のポスターからなのか、あるいは二次創作物からなのか―はっきりしません。ただ、これは非常によくあることのようです(やっぱり、『怪物くん』かしら……)。

果たして怪物を作った人間が怪物なのか、怪物だと決めつけているのは人間の主観なのか……。名前がついてないことによって、かえって問いかけてくるものが多いように思えます。

 発見② コピペの手抜き仕事は危険!

さて、フランケンシュタインは人間を創造するという目標に没頭し、急ぐあまり、狂気の果てにできあがって動き出した「それ」の容姿の醜さに驚愕します。ちなみに怪物が大男なのは、部分ごとに精密に作っていると膨大な時間がかかってしまうので、あえて大きく創ったらしいです。

こうして死体からツギハギで創った人間は、生命は持ったけれども、びっくりなほどに醜かったわけです。コピー&ペーストの手抜き仕事って、一見完成しているように見えて、本質的な問題を抱えていたりするもの

また、一人で仕事を進めてしまったので、「というかそれ、気持ち悪くない?」とか、冷静に止める人がいなかったんでしょうね。第三者に確認してもらうことは大切だなと実感します。

発見③ 言語と愛情の発見が美しい

さて、本書では実験室を飛び出し放浪した「怪物」が、道中、ある慎ましい家族を陰で観察しながら、言語そして愛情というものを発見していく章があります。よく家族の会話に出てくる「火」「牛乳」「パン」と、人の名前から覚えていき、家族愛、恋人の愛というものを知ります。

後半で「怪物」とフランケンシュタインが対峙するとき、「怪物」は一人で寂しくてたまらないので、恋人を作ってほしいと懇願します。しかしフランケンシュタインがこの依頼を断ったことから、「怪物」は次々とフランケンシュタインの恋人や家族を殺していきます。

もしも、フランケンシュタインが「怪物」に恋人を作ってあげていたら、どうなったのでしょうね。問題は解決したのか、ただ怪物が 2 人になって一層に厄介なのか、そもそも創りだすべきではなかったので抹殺すべきだったのでしょうか。いろいろ考えさせられます。

作者がスイスの別荘に滞在中、長く降り続く雨のために書かれたというこの作品。雨の日にでも、お手に取ってみてください(ちなみに、原書はこちらからダウンロードできます)。

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しとしと、ぱらぱら、土砂降り…「Rain」だけじゃない。雨の降り方の英語表現

6月 19th, 2014 | Posted by maggy in 小ネタ - (しとしと、ぱらぱら、土砂降り…「Rain」だけじゃない。雨の降り方の英語表現 はコメントを受け付けていません)

'Rain' by a.dombrowski

こんにちは、maggy です。雨の日はムシムシ、ジメジメ、体調や髪のうねりが気になりますが、なんといっても一番気になるのは空模様ではないでしょうか。

雨が降っていることは、英語で “It’s raining.” など、raining(雨が降る) が最も基本的な表現ですが、その他にも雨の降り方を表す言葉がたくさんあることはご存知ですか。

空模様をよく観察して、いろんな表現を使ってみましょう。

sprinkling = ぱらぱら雨
※ sprinkle は他動詞で「まき散らす」ことで、庭に散水する「スプリンクラー(sprinkler)」もここから来ています。

drizzling = しとしと雨

showering = にわか雨

pouring = 土砂降りの雨

driving rain = 横殴りの雨

storming = 暴風雨

わたしは現在、アイルランドに滞在していますが、年間降水量はそれほどでもないものの雨や降ったり止んだりとせわしないです。最近こそ天気の良い日が続いていますが、少し前まで毎朝のラジオに、上記のような実に多様な表現が出てきました。さもなければ、今日の午前は raining、午後も raining……と、つまらないニュースになってしまいますものね。

“driving rain” という予報を聞いた日、強風に雨が吹きつけられる様子を見て、「なるほど、これが driving rain か!」と納得。ぴったりの言葉で空模様を表せたら、少しはスッキリした気持ちになるかもしれません。

おまけ :翻訳作業が大雨のように降ってきて大変という方は、「スピード翻訳」の「スピード翻訳」サービスをご利用ください。

photo : “Rain” by a.dombrowski


食品業界で話題のハラル認証。次はコーシャ認証が来る?

6月 17th, 2014 | Posted by maki in 小ネタ - (食品業界で話題のハラル認証。次はコーシャ認証が来る? はコメントを受け付けていません)

'New York Kosher' by Thomas Hawk

こんにちは、maki です。食品業界で話題のハラル認証ハラルとは、イスラム教の戒律に従って調理・加工された食品のこと。地方の中規模レベルの食品加工業者がハラル認証の取得に力を入れているという報道を最近目にされることが多いのではないかと思います。イスラム教の食事に関する戒律で、よく知られているルールとしては、豚肉を食べてはいけないというのがあります。豚肉以外の肉でも、食肉加工する際に一定のルールに従っていないとダメですし、食肉として加工するまでの飼料であってもハラル認証を受けていないもので育てられたものも NG です。厳しい審査を経た上で、ようやく承認されるものなんですね。ようやく審査をパスし、ハラル認証というお墨付きを受けたシールを貼ることができれば、イスラム教徒の人も安心して買えるんですね(売る人も安心して売ることができます)。

全世界のイスラム教徒は、15.7 億人。イスラム教と言えば、中近東発祥なので、イスラム教徒の人口が最も多い国もあちらの方かな……と思っていたのですが、インドネシアが最多なんですね。他にも、パキスタン、インド、バングラデシュなどに多く、この国々だけで半分弱ぐらいになるんだそうです。

全世界の 15.7 億人が顧客になってくれる可能性があるとすれば、「ハラル認証を取得して、海外に売り出そう!」と考える企業も増えて当然かなと思います。和食がユネスコの世界無形文化遺産に登録されたこともこの動きに追い風になっているのかもしれません。そして、ハラル認証を受けようという潮流が、コーシャにも波及するかも……?

いまだに忘れられないのですが、留学する前に見かけた KOSHER の文字。寮の申込書の MEAL PLAN という項目の中で聞かれていました。食事付きを希望するなら、普通の食事がいいか、KOSHER がいいか……を聞いているようでした。あまりにも馴染みがありませんでしたし、そもそも自炊をするつもりだったので、特にチェックはしませんでした。そのとき、辞書で調べればすぐわかったはずなのですが、そのときは気にもせずにいました。留学先は New York だったのですが、現地に行ってすぐにわかりました。

'Waiting at West 4th (等待地铁)' by Jens Schott Knudsen

KOSHER とは、ユダヤ人用の食べ物のことだったのです(厳密には、食べ物以外のものを指す場合もあります)。KOSHER でも豚肉は禁じられていますので、イスラム教の戒律に似た部分もあります。ユダヤ教でも、食べてもいいものと食べてはいけないものが規定されています。ハラル同様、コーシャにも細かい規定がいろいろとあります。しかし、全員が食べ物にまで気を使う敬虔なユダヤ教信者というわけではないようです。寮のルームメイトもカリフォルニア州出身のユダヤ人でしたが、服装も普通でしたし、食べ物にも気を配っているようには(それほどは?)見えませんでした。

ニューヨーク近郊には、写真にあるような黒い帽子や服を身にまとい、ひげともみあげを伸ばす身なりのユダヤ教の厳格な教義に従って生きる人たちはかなり多かったですね(データにより異なりますが、ニューヨーク州の総人口の 8 – 9 % の人がユダヤ系なんだそうです)。20 世紀初頭に東欧諸国から移民となって渡ってきた人たちがニューヨーク周辺に定住したようです。寮は 1 年で出て、アパートに住みましたが、大家さんはポーランドからやってきた移民の人でした。生い立ちまでお聞きすることはなかったのですが、彼女もユダヤ系だったのかもしれません。また、アパートは、Manhattan の East Village と呼ばれるエリアでしたが、このあたりでもちょこちょこヘブライ文字の看板を見かけました。あのころはぼんやりと「ああ、ヘブライ語の看板だなあ」と思っていたのですが、実際はイディッシュという言語だったのかもしれません。こんな文字( ייִדיש‎ = Yidish)でまったく読めませんでした……。そんなユダヤ系の人の間ではポピュラーな食べ物で、いまやアメリカ全土、最近では日本でも人気のものがあります。それは、ベーグル!トラッドな食べ方としては、2 つにスライスして、クリームチーズをはさむスタイル。ひとつ 30 – 40 セントぐらいだった記憶があります。安くておいしい食べ物として、朝食にはたびたび登場していました!

脱線してしまいましたが、話題はコーシャに戻ります。日刊工業新聞でも報じられたようですが、ハラル認証に続き、JETRO によるコーシャ認証の調査が始まったようです。ハラルがカバーできる人口は 15.7 億人、コーシャでカバーできる人口は 1400 万人。どちらにも戒律に厳格に従わない生き方をする人もいますが、イスラム教徒に選んでもらえる認証の方が現時点では数で言えば優勢ですね。コーシャは、ユダヤ人だけの食べ物ということではなく、厳密なルールにのっとって加工されている食材ということで、アメリカでは「健康」や「安全」といった印象を持たれているようです。コストコでも積極的に仕入れているようです(日本のコストコでも買えるのでしょうか?)。先ほどご案内した記事にも取り上げられていましたが、加藤吉平商店という「梵」というおいしい日本酒を作っている会社がありますが、加藤吉平商店では、全商品にコーシャ認証を取得したとか。海外での日本酒ブームが高まっていますが、「梵」のコーシャ認証は追い風になるでしょうか。今後に期待です。

おまけハラル認証の申請手続きは、各国によって異なるようです。「スピード翻訳」では、企業の海外進出もお手伝いいたします。プロの翻訳者のご用命は「スピード翻訳」にお任せください。また、「コンシェルジュ翻訳」では、世界 58 言語に対応しています。さまざまな言語への翻訳は、「コンシェルジュ翻訳」サービスをご検討ください。


蔡一族の集会~日本の苗字・中国の苗字・韓国の苗字

6月 13th, 2014 | Posted by maki in 小ネタ - (蔡一族の集会~日本の苗字・中国の苗字・韓国の苗字 はコメントを受け付けていません)

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しばらく前に NHK を見ていたら、中国内陸部の農村に「蔡」と名乗る人が 800 人集まった……というニュースがありました。3000 年前に中国で初めて「蔡」という苗字を名乗ったと言われる蔡叔度を起源とする人たちが、中国全土、タイや韓国からも集結したそうです。日本にも家系図を作るブームがありましたが、中国ではいま先祖のことを調べようという人が増えてきているのだそうです。遠い遠い親戚の人の集い、いいですね。

この報道にもあった参加者の出身地が、タイや韓国にまでおよぶという部分が気になりました。タイの人は、いわゆる華僑かもしれませんが、確かに韓国にも「蔡」(チェ / 채)という苗字があります。中国の蔡叔度の子孫が朝鮮半島に渡ってきたのでしょうか(統一新羅の時代に中国式の苗字を名乗ったという歴史があるようですので、その一致かもしれません)。仲井眞沖縄県知事もルーツをたどると、14 世紀後半に福建省あたりから琉球に渡ってきた人の子孫なんだそうです。台湾にも蔡さんは当然います。馬英九を総統候補の座を争った蔡英文も蔡一族です。

韓国と言えば、同じ苗字の人がたくさんいるなあ……と思います。それもそのはず、韓国は苗字が少なく、全部で 250 種類ぐらいだそうです。(キム / 김)、(イ / 이)、(パク / 박)、(チェ / 최)、(チョン / 정)が韓国のトップ 5 で、全体の 54% を占めるのだそうです。そして、このトップ 5 のうち「朴」以外は中国でもトップ 100 に入るポピュラーな苗字のようです。確かに朴さん以外は中国人の苗字としても思い当ります(いまの仕事場にも中国と韓国の崔さんがいます。遠い遠い親戚?)。

韓国の苗字は約 250 種類ぐらいということですが、これと比較すると中国は多いですね。3,000 とも 4,000 とも言われています。中国の場合、(ワン / Wáng)、(リー / Lǐ)、(ヂャン / Zhāng)がトップ 3。この 3 種類で総人口の 21% 程度を占めるそうです。中国の人口が 13.51 億人ですから、その 21% だと、2.8 億人?すごい数です……。

日本ではよく聞く名前はいくつもありますが、そのどれも 1 割以上いるような感覚はまったくないですね。調査によると、日本人のトップ 3 は、佐藤鈴木高橋。これに、渡辺、田中、伊藤、、山本、中村、小林、斎藤が続きます。どれもよく聞く名前ですが……トップ 3 だけでは、総人口の 4% 程度にしかならないのです。

日本の苗字は、30 万以上あると言われています。中国も韓国も苗字は 1 文字であるケースが大半です。日本の場合は、1 文字から最長 5 文字までが確認されているとか。5 文字の苗字は、「左衛門三郎」(サエモンサブロウ)と「勘解由小路」(カデノコウジ)だそうですが、勘解由小路さんはなかなか読めないですね。長い苗字、読みにくい苗字などもありますが、中田(ナカ)と中田(ナカ)のように同じ文字なのに読み方は別というバリエーションもあります。たとえば、「新谷」と書いて、

あらや、あらたに、あたらしや、しんたに、しんや、しんがや、しんがい、にいや、にいたに、にたに

……までバリエーションが広がる例もあります。きゃりーぱみゅぱみゅの「みゅ」の音が自然な日本語で発生するのは「大豆生田」の「おおまみゅうだ」だけ……いうのが話題になりましたが、この「大豆生田」にも 20 種類以上の読み方があるそうです……。中国語でも韓国語でも特定の 1 文字の読み方は基本 1 通りですので、同音異字の逆、異音同字問題は外国人だけでなく、日本人、そして翻訳者にとっても大変です。

おまけ :「スピード翻訳」では、発注時に翻訳者への申し送り事項を書き添えることができます。もし、読み方の難しい漢字や名前、簡単なものであっても間違えると困るものについては、読み方などをメモとしてお書き添えください。

photo : “樂得個傻樣兒” by Louis Cai
この写真は、Louis Cai(蔡)という方の作品です。この子がお子さんであれば、この子も蔡さん?


台湾に「ひらがな」がある?!~中国語の入力方法、あれこれ。

6月 11th, 2014 | Posted by xiaofan in 小ネタ - (台湾に「ひらがな」がある?!~中国語の入力方法、あれこれ。 はコメントを受け付けていません)

'taipei sign' by Connor Walsh

大家好! すでに夏の様相を呈している台北から xiaofan です。前回「スマートフォンで効率よく韓国語や中国語を入力!」として、ハングルと中国簡体字の入力についてご紹介しました。同じ中華圏ですが、ここ台湾の入力方法はちょっと違います。中国語学習というと、前回ご紹介したローマ字を使って音を表すピンイン(拼音)がよく知られています。ただ実はあれ、中国大陸で編み出された音声の表記方法で、現在台湾の学校教育では使われていません

台湾の代表的な入力法として、まず注音符号(中文:注音符號)という独自の音声表記があげられます。ボポモフォ(ㄅㄆㄇㄈ、bpmf)ともいわれ、一般的に今の子どもたちの学習はここから始まります。台湾式ひらがなともいえる注音符号は、日本語のひらがなカタカナと同じように、漢字を出発点にして作られた表音文字で、全部で 37 字あります。

注音符号は、日本のふりがなと同じ機能を持っているため、街中のあちこちで見かけます。冒頭の写真 ※ のように標識のふりがなとして用いられていたり、あるいは書店の棚の並びがボポモフォ順になっていたり、携帯電話にはボポモフォ入力しかできないものもあります。そういえば、台湾で最も有名な中国語教育のテキスト『實用視聴華語』にはピンインとボポモフォが同じように記されています。ドラマの字幕にだって登場するくらいですから、台湾の生活には欠かせない文字といえます。
※ 写真のボポモフォが見えにくい場合は、写真をクリックしてください。漢字の隣に小さくボポモフォが書かれているのがわかるでしょう

'kbd_tw01' by Maki

ではその注音符号、実際の iPhone の画面で見てみましょう。左の緑色の部分が子音、右の赤い部分が母音にあたり、入力する際はそれらを組み合わせながらローマ字入力のように入力していきます。たとえば台湾の総統・馬英九の場合、簡体字ピンインでは「Mǎ Yīngjiǔ」と表します。ボポモフォは、ひらがなというよりは、ローマ字に近い書き方の表音文字です。たとえば、「馬」は「ma」という読み方です。「m」に相当する子音は「」で、「a」に相当する母音は「」となります。「ㄇㄚ」で「ma」となります。こんな感じで、「馬英九」を注音符号に置き換えてみましょう。
※ 実際には、キーボードに色はついていません

馬英九 → ( ㄇㄚ ) + ( 候補選択 ) + ( ㄧ ㄥ ) + ( 候補選択 ) + ( ㄐ ㄧ ㄡ ) + ( 候補選択 )2 + 1 + 2 + 1 + 3 + 1 = 10
※ Windows では、上記の例の「」が「|」のように表示され、前掲のキーボード画像にはこの文字がないように見えますが、「一」に見えるキーに相当します。縦書きと横書きの場合では、文字の形が違います。日本の長音記号と同じルールですね

となります。

台湾などで使われている繁体字は、ピンインでも入力できますので、試してみると、

馬英九 = Mǎ Yīngjiǔ → ( m a ) + ( y i n g ) + ( j i u ) + ( 候補選択 )2 + 4 + 3 + 1 = 10

となり、

馬英九 = Mǎ Yīngjiǔ → ( m ) + ( y ) + ( j ) + ( 候補選択 )1 + 1 + 1 + 1 = 4

という前回の記事でもご紹介したピンインの頭文字だけで入力する方法でも予測変換候補を得ることができました。

ボポモフォから話がずれてしまいましたが、このように注音輸入法でも 10 回の操作で入力ができました。ピンインからの変換だと、予測変換機能を利用して、簡単に入力できるのですが、注音符号だと、ㄇㄚ と入力したところで、変換候補から 1 文字を選択しなければなりません。ㄇㄚㄧ のように 3 文字入力すると、「馬英九」という予測変換候補が出てくれるのであれば、とても便利ですよね。でも、iPhone でも Android でもボポモフォは単漢字変換はできますが、予測変換はできないようです。

'kbt_tw02' by Maki

さて。台湾にはピンイン、注音符号以外にも倉頡(そうけつ)という入力法があります。実質的には注音符号を使う人のほうが多いのですが、30 代後半から 40 代前後の世代では今なお使われている入力法です。なお、その下の世代が注音符号を使って文字を入力していることになります。台湾のほか、繁体字を使う香港マレーシアでも使用されているとか。倉頡入力法が根本的にピンインや注音符号と異なるのは発音とは関係ないという点です。これは日本にはない入力法ですが、部首の組み合わせで入力することから、漢和辞典の部首検索を進化させた方法といっていいかもしれません(こじつけ??)。ここで、ほかの入力法と比べながら台湾総統の名前を入力してみます。

例 : 馬英九
ピンイン = ( m a ) + ( y i n g ) + ( j i u ) + ( 候補選択 )
ボポモフォ = ( ㄇ ㄚ ) + ( 候補選択 ) + ( ㄧ ㄥ ) + ( 候補選択 ) + ( ㄐ ㄧ ㄡ ) + ( 候補選択 )
倉頡 = ( 尸 手 尸 火 ) + ( 候補選択 ) + ( 廿 中 月 大 ) + ( 候補選択 ) + ( 大 弓 ) + ( 候補選択 ) = 4 + 1 + 4 + 1 + 2 + 1= 13

この方法のメリットとしては発音がわからなくても形から類推していけることでしょう。その際、尸 手 火 廿 中 月 大 など全 26 種類の意味(用法)を理解しておくことは必須ですが、日本人にとっては、水 = さいんずい、手 = てへん、人 = にんべん、など馴染みのあるものも含まれているので、日本人中国語学習者には比較的習得しやすい入力法かもしれません。何より、手書き入力の登場で解消されつつあるとはいえ、意味を表す漢字学習の最大の関門は「発音がわからないと探せない」、この点に尽きるのではないでしょうか。あるいは、倉頡で入力して発音を調べる、というのも一案かもしれません。

大陸ならピンイン、台湾なら注音など、どこの中国語を勉強したいかによって入力方法を変えるのもいいでしょうし、あるいは音の習得が苦手な方は倉頡と選択肢を広げてみるのもオモシロいでしょう。いろいろ試すと中国語の漢字への理解がいっそう深まること間違い無し。ピンイン以外の方法もぜひお試しあれ!

あ、ボポモフォのキーボードだと、左端のキーが上から順に「ㄅㄆㄇㄈ」(bpmf)と並んでいるんですね。英語のパソコンやスマートフォンのキーボードのいちばん上の行にならんでいる Q W E R T Y から生まれた QWERTY という単語にとても似てますね。

繁体字どころ台湾から xiaofan でした。再見囉~!

おまけ :「スピード翻訳」では、スマートフォンへの中国語・韓国語の入力代行サービスは提供はおこなっていませんが、24 時間 365 日、中日・日中・韓日・日韓の翻訳を受け付けております(もちろん、英日・日英翻訳も)。プロの翻訳者のご用命は「スピード翻訳」にお任せください。


スマートフォンで効率よく韓国語や中国語を入力!

6月 9th, 2014 | Posted by maki in 小ネタ - (スマートフォンで効率よく韓国語や中国語を入力! はコメントを受け付けていません)

'iPad miniでフリック入力' by uka0310

こんにちは、maki です。スマートフォンで日本語を入力するときに、ディスプレイに表示されているキーボードの「」を 5 回タップして「」に変換するような携帯電話で慣れ親しんだ方法もありますが、フリック入力というタッチパネルにぴったりの方法もあります。最初慣れるまでにすこし練習しましたが、いまではこの入力方法にすっかり馴染んでしまいました。「」を入力するためには、「」のキーを指で長押しすると「」のキーの左に「」、上に「」、右に「」、下に「」が表示されます。そのときに指をそのまま下の方にスライドさせると「」が入力できます。入力が短い時間で済むのでとても気に入っていますが、みなさんはどちらの方法で入力していますか?
キーの上に扇状に「」から「」が表示されるタイプの入力法もあるようです

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先日、出勤の途中に隣に座った女性がスマートフォン(Galaxy でした!)でメッセージを入力していました。それは日本語ではなく、韓国語でした。韓国語のスマートフォン用のキーボードはとても楽そうですね。iPhone のキーボードでは、韓国語の場合は、このような配列になっていて、左半分(緑色でハイライト)が子音、右半分(赤でハイライト)が母音に分かれていて、左右の指を使って、子音と母音の組み合わせを作成し、入力を完成させます(日本のように片手打ちの人はほとんどいないようです。携帯ゲーム端末のように両手で持って入力するというのが標準的です)。
※ 右図は、iPhone の韓国語キーボード

たとえば、現大統領の「朴槿惠」の場合は、

朴槿惠 = 박근혜 → ( ㅂㅏㄱ ) + ( ㄱㅡㄴ ) + ( ㅎㅖ ) : 3 + 3 + 2 = 8

のように 8 回の操作で入力が完成します。

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中国語(簡体字)の場合はどうでしょう。中国語の入力方法はピンインというアルファベット入力がポピュラーです。たとえば、現国家主席の習近平の場合は、

习近平 = Xí Jìnpíng = ( x i ) + ( j i n ) + ( p i n g ) + ( 候補選択 )2 + 3 + 4 + 1 = 10

のように 10 回の操作で入力ができました(中国語の場合は、漢字の変換候補が出てきますので、それを選択するというアクションも必要なので、それを 1 操作とカウントしました)。
※ ピンイン表記の中国語には四声と呼ばれる声調を表すイントネーション記号がありますが、これは入力しなくても OK です

こうやって見てみると、日本語は変換に必要な操作が多いような気がします。韓国語、中国語のサンプルには、各国の元首クラスを例にしていますので、日本であれば安倍晋三でしょうか。この場合は、

安倍晋三 = あべしんぞう = ( ) + ( へ ゛ ) + ( ) + ( ) + ( そ ゛ ) + ( ) + ( 候補選択 )1 + 2 + 1 + 1 + 2 + 1 + 1 = 9

となります。習近平よりも 1 文字多くても、1 ステップ少なく完了します!しかも、「あ へ ゛ し ん」に変換候補の選択を加えて 6 ステップの操作で、変換候補が出てきました♪

……と喜んでばかりもいられません。予測変換は、韓国語にも中国語にもあって、

朴槿惠 = 박근혜 → ( ㅂㅏㄱ ) + ( ) + ( 候補選択 )3 + 1 + 1 = 5

习近平 = ( x i ) + ( j i n ) + ( p ) + ( 候補選択 )2 + 3 + 1 + 1 = 7

という予測変換が可能です。

韓国語は強敵でも、中国語と比較すると「あ へ ゛ し ん」は漢字が 1 文字多くても、6 ステップですんでいるじゃないか!……というご意見もあるかもしれませんが、中国語には裏ワザ(?)があるんですね。

习近平 = ( x i ) + ( j n ) + ( p ) + ( 候補選択 )2 + 2 + 1 + 1 = 6

のようにある程度、母音の入力を省いても変換候補が出てくるんですね。強敵です……。

中国語の母音省略入力法で、( m ) + ( z ) + ( d ) + ( 候補選択 ) という入力法があるのも教えてもらいました。これを入力すると……

梦之队mèng zduì) = ドリームチーム(夢之隊)
毛泽东mzé dōng) = 毛沢東
明知道míng zdaò) = (「知っているくせに」といった意味のフレーズ)
民主党mín zdǎng) = 民主党

などの変換候補が得られました。ひとつひとつの文字の最初の音を入力するだけでも、予測変換が可能ということですね。この方法だと、

习近平 = ( x ) + ( j ) + ( p ) + ( 候補選択 )1 + 1 + 1 + 1 = 4

で、習近平は 4 ステップ! 恐るべし……。

今回の例は、著名人などをサンプルに使いましたので、予測変換がかなり有効に働きました。予測変換がさほど有効ではないテキスト(文章)の変換を想像した場合、「中国語には、日本語や韓国語のような助詞がない」、「中国語には過去形などの時制がない」、「日本語はひらがな表記すべき語彙やカタカナ語が非常に多い」といった背景から、日本語は韓国語や中国語と比較して、変換効率がいいとは言えないのではないかな……と想像しています。

どの国の言葉が優れているとかいう話ではありません。各国の研究者が各国語に最適な(変換効率のよい)入力方法を日々模索しているんだなあ……と感じました。人気ドラマの主人公ではありませんが、細かい所まで気になるのが僕の悪い癖……。

※ ちなみに、中国語でも台湾などで使われる繁体字の入力方法は、注音輸入法という方法が普及しています。こちらの記事で繁体字のポピュラーな入力法をご案内しています

※※ 今回ご紹介したのは iPhone の iOS 7 標準の入力方法です。Android や Windows Phone だと、さまざまな入力用アプリがあったり、予測変換用に用意された辞書の収録語数や変換効率の違いがあったりするので、どれが最も便利かとは、一概に言えない部分は残りそうです

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