映画に騙される……のを楽しむ : モキュメンタリー

6月 13th, 2018 | Posted by maki in 小ネタ - (映画に騙される……のを楽しむ : モキュメンタリー はコメントを受け付けていません)

Wikimedia : Zeligposter.jpg

こんにちは、maki です。最近、ひさしぶりに映画をたくさん見ています。DVD で見るのはもちろん、「これは!」と思った映画もたまに見にいったりします。

先月は、『カメレオンマン』というウディ・アレンの 1983 年の映画を再見しました。しかも、レーザーディスクで!さすがに DVD の映画や、しかもリマスタリングされた映画の DVD や Blu-ray と比較すると、さすがに画質は落ちますが、そのあたりはこの映画ではまったく問題ありません。この映画は、第二次世界大戦前後(主に 1920 – 30 年代)を扱ったドキュメンタリー映画 ※ なので、当時の白黒のフィルムも挿入されていたりして、そもそもの映像の画質も高いわけではないので、問題ないんです。
※ ホントは、ドキュメンタリー映画ではありませんw

モキュメンタリーとは?

この映画の主人公は、レナード・ゼリグ(ウディ・アレン)という人物。まわりにいる人物にあわせて、自分自身の姿が自然に変化してしまうという奇妙な人物です。上流階級の白人といると共和党支持者の白人に、ジャズ・ミュージシャンといればトランぺッターに、中国人といっしょにいると中国人に変身してしまいます。それを精神疾患と考えた精神科医が献身的に治療をおこなう……という話。作品中に当時の白黒フィルム ※ が挿入されていたり、カラー映像の回想インタビュー(実際の著名人も出演しています)が挿入されていたりで、とてもよくできたドキュメンタリー作品だと思います。
※ 合衆国大統領からベーブ・ルース、ローマ法王、果てはヒトラーとも同じフレームに!

このような、架空の人物・事象などをテーマにしたドキュメンタリーの作品のことを

mockumentary (モキュメンタリー)
mocumentary とも綴る

……と呼ぶそうです。これは、

mockumentary = mock + documentary

……という造語なんだそうです。

mock には、形容詞として「見せかけの」「にせの」「まがいの」といった意味があります。ウェブサービスの開発現場でも「とりあえず、モックを作ってから考えよう」(モック = ダミーのサイトやプログラム)なんてことを言ったりします。

なので、mockdocumentary がくっつくと、

mockumentary = 偽のドキュメンタリー

……ということになりますね。

mockumentary の類義語として、

pseudo-documentary = 疑似ドキュメンタリー

……があります。この pseudo にも「偽りの」「にせの」「まがいの」「見せかけの」「擬似の」といった意味があります。

こういった映画は、けっこうあるみたいで、Wikipedia の「モキュメンタリー」のページ にもいくつか掲載されています。おもしろそうなので、見てみようと思います♪
※ Wikipedia のリストの中にある『スパイナル・タップ』(1984)は、評価がとても高いモキュメンタリー作品なんですが、なぜか当時は日本では公開されませんでした。そして、なぜか今年(2018!)上映されるみたいです!これは映画館に行くべきかも……

類語でも、分野によっては訳し分けも必要

この mockpseudo非常に意味が近いのですが、翻訳ではどの分野で使われているかによって、訳語は変わってきます

医学・化学・環境分野では、

  • pseudo ⇒ 疑似 > 擬似 >> 擬
  • mock ⇒ 模擬 >> モック

……と訳されることが多いようです。
※ 訳語間の > / >> は、その前後の訳語の利用頻度を表しています

しかし、IT・機械・電気電子分野においては、

  • pseudo ⇒ 擬似 > 疑似 >>擬
  • mock ⇒ モック >> 模擬

……のように訳されます。

このような分野ごとの訳語の頻度については、ロゼッタ『究極の辞書』(統計型辞書)サービスで調べることができます。次回は、この使い方について説明したいと思います。

おまけ(どうでもいい話)(ホントにどうでもいいので小さい字で書きますね)なぜ、わざわざ DVD でなく、レーザーディスクの『カメレオンマン』を見たかというニッチな話。現在流通している DVD(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)は、字幕でしか見られません。レーザーディスク版(VHS 版も)の『カメレオンマン』(ワーナー・ホーム・ビデオ)は公開当時そのまんま!挿入されたモノクロ映像でのセリフは英語(字幕あり)ですが、ナレーションやインタビューシーンは吹替という凝った作り(配給元の気合が感じられます)。公開当時の形でこの映画を見ていると、本物の海外制作のドキュメンタリー番組をみているような気分になれます♪