こんにちは、maggy です。ただ今、夏目漱石の『吾輩は猫である』を読み直しています。最近、手持ちの iPad に電子書籍をダウンロードしたからです。物質の本の手触りや重量感なんかがとても好きなんですが、電子書籍のこうして気が向いたときに読めるところもいいですね。
さて、この作品には本文中に牡蠣的主人という珍しい言葉が出てきます。「あの牡蠣的主人がそんな談話を聞いて時々相槌を打つのは猶面白い」などのくだりです。
英語で oyster には、こんな意味があります。
oyster
- (貝の)カキ
- 鶏・七面鳥などの腰骨のくぼみについている美味な肉片
- ((俗))口の堅い[無口な]人
この 3 番目のスラングの無口なという意味にあたり、つまり牡蠣的主人 = 無口な主人ということのようです。
(as) close as an oyster で 牡蠣のように無口なを意味する英語表現もあります。さらには、clam(ハマグリ・アサリなどの二枚貝)も、同様に「無口な人、口の硬い人」という意味の用法があります。
貝はギュッと口を閉じてますもんね。でも、「牡蠣的」とそのまま直訳で日本語に翻訳するなんて、なかなか大胆で驚きました。
さらに調べてみたところ、昭和時代の女学生の隠語にも、oyster を由来とする言葉があったそうです。無口な黙りやさん、むっつりさんな女学生のことを、オイちゃんと言ったのだとか(参考:おいちゃんとは – Weblio辞書)。
はじめはおじさんのことかと思ったのですが、いえいえ、女学生です。オイスターちゃんのオイちゃんなんですね。
「oyster = 無口な」という表現は、かつては今よりも浸透していたのでしょうか。なぜ今は使わなくなったのでしょうね。うーん……つい「黙って」考え込んでしまいました。
おまけ :英語には「Oysters are only in season in the ‘r’ months (牡蠣は “r” の付く月が食べ頃だ)」という言葉もあります。つまり、September から April までですよ♪
photo : “Oysters on a market stall in Gloucester” by James F Clay