そこのタバコ屋でノータライズしてもらえ……?

10月 22nd, 2012 | Posted by maki in 小ネタ

'copies faxes notary public' by cinnamonster

こんにちは、maki です。実際にアメリカで暮らしてみると、中学・高校の 6 年間に加え、大学では英文学専攻だったので、その 4 年間も加え、都合 10 年学んできたはずの英語がまるで役に立たないシーンにちょくちょく遭遇します。Shakespear の sonnet や課題のテキスト(reading assignment)は読めても、日常生活に困るという……。

留学先の学校に向かったその日、初日ということで、学事部のようなセクションに行って、学籍登録をするというタスクがありました。担当の人に書類を提出すると、「そこのタバコ屋でノータライズしてもらえ」という謎の指令が出ました。ノータライズ? タバコ屋? ちんぷんかんぷんです。

そもそも「ノータライズ」の意味がわかりません。そして、学籍登録と近所のタバコ屋の関連がまったくわかりません。タバコ屋に行くと、正式に学生として認められるとはどういうことでしょうか……。???な思いのまま、通りの向かいのタバコ屋にとりあえず行ってみました。ダウンタウンによくある間口の小さな薄暗い店舗で、タバコのほかに、コピー機が置いてあったり、ちょっとした文具や雑貨のようなものを売っているようです。店主はごく普通の個人商店の店主風の人(雇われ店長かもしれません)で、自分を正式な学生にしてくれる権限があるような人にはまるで見えません。「ノータライズ」の意味もわかりませんし、いまは大学の担当者は「ノータライズ」と言ったと認知できていますが、未知語なのでそのときは何と言ったのかも記憶はあやふやな状態。よくわからないので、とりあえずその店でいちばん目立つコピー機でコピーを取ってみました。そして、とりあえず学事部にもどって、「こういうこと?」ってコピーを見せたところ、タバコ屋でサインをしてもらえと言われました。ヤツは笑ってました!(なんだよ!)まだよくわからないまま、またタバコ屋に行って、店主に書式を渡して、サインしてくれと頼んだところ、店主は細かいことを聞きもせずにサインしてくれました。10 ドルかそこらを支払ったような記憶があります。

この「ノータライズ」は、英語の綴りは notarize。意味としては、公証人が契約書などを公証することだそうです。本人による契約であることを公証人(notary public)の目の前で署名などをすることで公証するということが、アメリカではごく一般的におこなわれているようです。日本には印鑑があり、印鑑証明などがあるので、大きな契約時にもそれで済んでしまうことが多いですが、アメリカはサイン社会なのでこういうシステムがあるようなのです。日本では公証人(遺言や離婚、任意後見契約、金銭消費貸借契約、土地建物賃貸借契約などの公正証書を作成する公務員)のお世話になるようなシチュエーションが個人的にはほとんどなかったので、まったく頭に浮かびませんでした。

アメリカではタバコ屋の店主がアルバイト的に公証人をやっている(比較的簡単に資格取得ができるようです ※)のに、日本では公証人は公務員であるということもかなり大きな違いです。世界に目を向けると、日本のように公務員やそれに準じる人しかできない国もありますし、アメリカのような国もあります。渡米直後のかなり大きな異文化体験でした。そして、「聞くは一時の恥」などという言葉を思い出したりしました……。

おまけあるサイトによると、全米の公証人(notary public)は、430 万人! そのほとんどが、副業で公証人をしているんだそうです。資格取得のためには試験に合格したり、一定の審査があるようですが、州によりバラバラみたいです。日本とはまるで事情が違うようです。

photo : “copies faxes notary public” by cinnamonster


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