ひたいブスで歯並び美人? 日本と海外(欧州)の美意識の違い

4月 28th, 2015 | Posted by maggy in 小ネタ - (ひたいブスで歯並び美人? 日本と海外(欧州)の美意識の違い はコメントを受け付けていません)

こんにちは、maggy です。春は出かけることが増えて、おしゃれが楽しい季節ですね。新しい髪型やメイクにも挑戦したくなります。わたしは相変わらずボブヘアーですが、最近ちょっとパーマをかけてみました(過去の記事ボブヘアー(ボブカット)のボブ(bob)とは?も、ぜひご一読ください)。

さて英語には、Beauty is in the eye of the beholder. (美は見る人の目の中にある) という、ことわざがあります。しかし美はそれぞれの目のなかだけでなく文化のなかにもあるのだと、つくづく思います。

日本語には「目は口ほどに物を言う」とことわざもありますし、見た目はビジネスでもプライベートでも、コミュニケーションにとって重要なもの。そこで今回は、わたしのイギリスに住んだ経験から、日本と海外(欧州)における美意識の違いを痛感した実体験をご紹介します。

① わたしは「ひたいブス」らしい

ロンドンの某有名サロンで、カットモデルをしたときのこと。施術前に訓練生がわたしの前髪をかき分けながら、なにやら首を傾げていました。講師のベテラン美容師がやってくると、訓練生はこんな相談を始めました。

「この女性は、額(forehead)が狭くてきれいじゃないので、前髪(bangs)を長くして、額を隠してしまおうと思います」

「どれどれ……」

講師が鏡を覗き込み、わたしの前髪がオールバックにされた、その瞬間。

「Oh no…これは隠してくれ」

生え際を見てまるで「その死体は隠しておいてくれ」と言わんばかりの態度で目を背けられたのは、生まれて初めてのことでした(そもそもカットモデルとはいえども、わたしも英語がわかるのに、目の前でこのやりとり……)。

気になったのが、額に対する日本との美意識の違いです。どうやら欧州では、額に高さと広さがあることが、美人の条件のようです(参考 : 「美しい額を作る 5 つの法則」 5 Tips to a Gorgeous Forehead – Ready Set Beauty)。

調べてみたらこの感覚は根深いようで、『美女の歴史』(ドミニク・パケ著/創元社)によると、欧州の中世の女性(本書ではドイツ、イタリアの女性を例に)は、髪の生え際を脱色までして、額が広く、つややかに見えるように努力したそう。中世当時、広い額は眼差しを際立たせる美人の条件と考えられ、脱毛後に毛が生えてこないように、コウモリやカエルの血、毒人参の汁、焼いたキャベツの灰を酢に漬けたものなどを塗ったりもしたそうです。

もしも、この中世の美意識が現代イギリスにも少しでも残っているのだとしたら、それは確かに、わたしの狭い額には、焼いたキャベツの灰を酢に漬けたものくらいなら、塗りたくなるほど醜かったのかもしれません……。

② 歯並びは日本以上に大切らしい

イギリス人の知人のおじいさんに、写真を撮ってもらったときのことです。「Say cheese(はい、チーズ)※イギリスでもこう言います」の合図にあわせて、口角を上げた瞬間。

「おお、歯並びがきれい! もっと歯を見せて」

冗談を言っているのだと思って、馬のように歯を見せて笑うと、「すばらしい!」と、上気気味で大絶賛。(じいさん、さては歯フェチ……?)と気になりましたが、実はその後、別のイギリスの方にも歯並びのことを何度か褒められました。日本では、歯医者さんでしか褒められたことがなかったのですが……。

どうやら欧州では、歯並びが美しいことは、日本よりも美の条件として重要視されているようなのです。そのため、幼い頃に矯正をする人の数は、日本よりも多いと聞きました。特に八重歯 = double tooth に対する感覚は全く違います。日本ではかわいいとされていますが、欧米ではドラキュラのようで好ましくないと考えられ、vampire tooth とも呼ばれます。

ところ変われば言語が違いますが、ところ変われば美も変わるものですね。海外に行けば、あなたの新たな魅力に気が付くかも!? 新たな欠点……は、わたしの前髪のように、隠してしまえばいいのです。

ちなみに、顎が 2 つに割れている、通称「ケツ顎 = cleft chin」は、イギリスではセクシーとされています。わたしはケツ顎ではないので、この違いは体験できませんでしたが、どなたかぜひ実証してみてください。

photo : “Beauty Is Within The Eye Of The Beholder” by Harry Thomas Photography


中国語の「真面目」についてのマジメな話。

4月 23rd, 2015 | Posted by xiaofan in 小ネタ - (中国語の「真面目」についてのマジメな話。 はコメントを受け付けていません)
喧嘩やめて、仲良くしてね

大家好! xiaofanです。

先日、ある台湾ドラマを久しぶりに中国語字幕で観ていたときのこと。(ああ、最初に観た時は、このあたりはホント何言ってるかわかってなかったなあ)などと思い返しながら、何気なく観ていてあるシーンにちょっと吹き出してしまいました。

女 : “我今天才看清楚你的真面目”
男 : “所以我今天看到也是妳的真面目”

何に吹き出したって日本語と中国語の意味の違いに、です。具体的には、この会話に登場する真面目清楚が日本語と中国語では意味がまったく違うということなんです。

まず、真面目について。は「本当の」という意味の形容詞、そして面目は日本語にもあるように顔や姿のことを意味するので、本当の姿本性となるわけです。反対語はウソの顔ですから假面目の字は日本語の漢字にするとですので、日本語の仮面とつながります。「仮面の裏側に本当の顔を隠している」という風に考えれば、中国語の真面目假面目の対立関係はなんとなく理解できます。

しかし、日本語の感覚でその字面をだけを見て真面目 = マジメと解釈してしまうと、その反対語はフマジメ = 不真面目です。漢字を知っているがゆえに「何となく意味がわかる~♪」などと思っていると、実は中国語では「全然意味が違ってがっかり……」ということがよくあります。日本人の中国語学習者にとっては悩ましい問題です。ちなみに、日本語のマジメの意味を表す中国語は認真です。

もう一つ、この例がオモシロいのは清楚。日本語では主に女性の形容に用いられる、清らかもしくはおしとやかであるポジティブな表現ですが、中国語では、はっきり明らかクリアといった意味になります。

つまり、さっきの会話、

女 : “我今天才看清楚你的真面目

……女の人が言っていたのは、「あなたは、清らかマジメな人ね」のようなほめ言葉などではまったくなく、

女 : 「今日、あなたの本当の姿はっきり見たわ」
男 : 「ってことは、俺が今日見たのも、お前の本当の姿だってことだ」

……といったところで、痴話げんかであり、別れ話なわけです!(ちょっと直訳めに訳してみました)

いやあ、日本語の、人柄に対する割と肯定的な意味はまったくない。ただ、このように同じ漢字圏でも中国語と日本語では意味が大きく異なる、という例、実ははたくさんあります。中国語の愛人は、日本語の愛人とはまったく違ってでありだというのはよく聞きますよね。他にも中国語と日本語で意味が違ってしまっているもの代表的な語彙をご紹介しましょう。

: 中国語では「母親」の意で、子どもではありません
勉強 : 中国語では「学ぶ」という意は含まれず、「無理強いする」の意
結束 : 中国語では「終わる」の意
審判 : 「裁判」の意。反対に裁判は「審判」

どうしてこんなにズレたんだろう、と思うほどの離れっぷりですよね。ただ、こういうズレもまた、中国語や漢字の奥深さですし、その違いからかえって日本語の姿を見ることになったりして、やっぱり中国語ってオモシロいなあと思うのです。

繁体字どころ台湾から xiaofan でした。再見囉~!

おまけ :「スピード翻訳」では、字幕翻訳も含め、24 時間 365 日、中日・日中・韓日・日韓の翻訳を受け付けております(もちろん、英日・日英翻訳も)。プロの翻訳者のご用命は「スピード翻訳」にお任せください。

photo : “喧嘩やめて、仲良くしてね by 命は美しい, on Flickr”


日本は Suica や ICOCA、ロンドンは Oyster card! IC トラベルカードのローカライゼーション

4月 21st, 2015 | Posted by maggy in 小ネタ - (日本は Suica や ICOCA、ロンドンは Oyster card! IC トラベルカードのローカライゼーション はコメントを受け付けていません)
'London Underground Oyster card tube fare increases 2011' by London Chow

こんにちは、maggy です。もうすぐゴールデンウィークです♪ 旅行が楽しい季節ですね。わたしは、海外旅行の計画を立てているところです。でも日本は狭い国土とはいえ、全国各地で異なる魅力がたくさんあるので、鉄道やバスでのんびり国内旅行もいいですよね。

鉄道やバスといえば、JR 東日本の IC カード Suica(スイカ)は便利でもう手放せません。乗り換えがスムーズですし、自動改札機のおかげでなんとか乗車に間に合ったことが、何度もあります。

ところで Suica の名前の由来をご存知ですか? 「スイスイ行ける IC ード」という意味は知られていますが、元々の由来は「Super Urban Intelligent Card」で、その頭文字を取ったのだとか。意外とカッコイイ!

わたしはイギリスとアイルランドに住んだことがありますが、ロンドンの地下鉄・バスの IC カードの名前は Oyster card(オイスターカード)、アイルランドは Leap card(リープカード)と、それぞれ名前が違いました。そこで、それぞれの名前の由来を調べてみました。

まずロンドンの Oyster card(オイスターカード)Oyster(オイスター)= 牡蠣ですが、なぜ? これはいかにもイギリスらしく、シェイクスピアのお芝居に出てくる有名な台詞で、今や英語の慣用句となっている「The world is your oyster(世界はあなたの思いのまま)」という言葉に由来するそうです( 『ウィンザーの陽気な女房たち』 The Merry Wives of Windsor の台詞に源があるそうです)。また、「固い安全な殻の中に真珠(情報)が守られている」という信頼のイメージもあるから、だとか(参考 : 朝日新聞デジタル:「オイスターカード」でロンドンを乗りこなそう)。

アイルランドの Leap card(リープカード)は、写真にカエルのイラストがあるように、leap = 「ピョンと飛ぶ」「飛び越える」という意味です。アイルランドの首都ダブリンには路上にバス、DART(ダート = Dublin Area Rapid Transit)と呼ばれる鉄道、そして Luas(ルアス)と呼ばれる路面電車があります。 Luas はアイルランド語(ゲール語)で Speed を意味します。これらを組み合わせて移動をしますが、IC カードを使ってスムーズにピョンと乗り換えるイメージに、なんとなく合っていますね。

イギリス南西部のウェールズでは、ロンドンとはまた異なる交通会社が、バスや列車を運行しています。首都カーディフの Cardiff Bus(カーディフバス)の IC カードの名前は iff card(イフカード)iff は、この地で話されるウェールズ語……? と思いきや、違いました。

iff = if and only if(~の時かつその時に限り)という biconditional(相互条件)を意味する英語の接続詞に由来するそうです(参考 : What you think about the Iff card – The Guardian)。iff は数学の条件式などに使われるものの、あまり日常的には使われません。しかしなんとか説明するのなら、例えば I’ll go iff you go. と書くと、「あなたが行く」という条件が満たされたときだけに限り、わたしは行く」、つまり 君が行くなら、私も行くよ(でも行かないのなら、私は行かないよ) という意味になります。ちょっとした言葉遊びのようなものなのだとか。また、首都 Cardiff(カーディフ)のことをローカルの人は Diff(ディフ)と略すことにも由来しているとか。

いずれにせよ、それぞれの地域で IC カードの名前に地域性を持たせることで、地元っ子たちに愛されて普及するように、工夫をしているようですね。

そういえばJR 西日本の IC カードは ICOCA。「行こうか」の関西弁「行こか」とかけて、ローカライズしています。こちらも実は元々の由来があり、IC Operating Card の頭文字を取ったのだとか。うーん、だんだん、後付けなんじゃないかと疑う気持ちも出てきましたけど……?

おまけ : IT 分野、コンテンツ産業のローカライゼーションに、各地の言葉へのスピーディーな翻訳が必須です。「スピード翻訳」をぜひご活用ください。依頼文だけでご発注いただくと、翻訳できかねるケースもありますので、ご発注の際は依頼の背景などもお書き添えください。

photo : “London Underground Oyster card tube fare increases 2011” by London Chow


日本が起源の絵文字(emoji)に世界が「白人偏重」と激怒?

4月 17th, 2015 | Posted by maggy in 小ネタ - (日本が起源の絵文字(emoji)に世界が「白人偏重」と激怒? はコメントを受け付けていません)

こんにちは、maggy です:) スマートフォンのテキストメッセージのやりとりで、すっかり絵文字に慣れてしまい、長い文章を書くのがやや億劫になっている今日この頃。ライターとしては死活問題です。

テキストの語尾に笑顔やハートの絵文字を付けたり、あるいは絵文字だけで返信したりすることは、今や多くの日本人にとって日常的になっているのではないでしょうか。

左の写真は、スマートフォン用の絵文字ですよね。かわいい豊富な種類の絵文字があります。これらと同じ絵文字が、海外でも使われていることはご存知でしたか? しかもそのまま emoji と呼ばれています。
※ もっと前から存在しているものとしては、:) や、:-):D;-) のような記号や文字の組み合わせからなる感情を表す emoticon( = emotion + icon)というものもありました

絵文字(emoji)は、もともと日本の携帯文化から生まれ、アップルや Google の働きかけにより、文字集合の国際規格である Unicode に取り込まれたことで、今では世界中の iPhone や Gmail の利用者に使われています。

こうして日本発・世界標準になりつつある絵文字(emoji)ですが、海外でさまざまな反響があります。例えば世界の言語のトレンドを分析・追跡する米グローバル・ランゲージ・モニター(The Global Language Monitor)は昨年、絵文字人気を背景に、2014 年の英語の流行語首位は、「emoji」になるだろうと予想しました。同年 12 月の結果発表では、実際に絵文字のハートマークが首位だったと発表しました(参考 : The Heart ♥ Emoji (for love) is Top Word, Pope Francis topped by Ebola as Top Name, “Hands Up, No Shoot” is Top Phrase – The Global Language Monitor)。

こうして広く受けいれられている反面、批判も飛び交っています。例えば、絵文字は日本発なので、天狗七夕おにぎりと、日本文化ならではの絵文字が多数あります。「この絵文字は何なの……?」「わからない」との困惑の声も。「絵文字に出てくるよくわからない食べ物だけで、一週間過ごしてみました」というチャレンジを行ってニュース記事にしたアメリカ人までいます(参考 : My Week on the All-Emoji Diet – The Atlantic)。ちなみにその方がお住まいの大西洋では、バナナパントウモロコシの入手は簡単でしたが、おにぎりおでんを準備するのは大変だったとか。

謎めいているだけならまだしも、もっと深刻な批判も。人間の顔や身体を描いた絵文字について、「白人偏重だ、人種の多様性を反映していない!」という批判が、絵文字を採用しているアップルなどに相次いでいるそうです。例えば 姫/プリンセス(princess)の絵文字は、白い肌に青い目になっているのです。

日本人としては違和感を抱かずに来ましたが、よく考えたら「なぜ日本発なのに日本人の姫ではないのか」。あるいは、「黒人の姫だっているじゃないか」……と、突っ込みどころが満載です。偏見……というわけではないのですが、この日本独特の文化背景は、どうも解説しにくいものです。絵文字が世界の言語して使われるためには、多様な人種の人が、気持ちよく自己表現ができるものであってほしいですよね。

この事態を受け、ついに先週(2015/04/08)、アップルは iOS 8.3 では絵文字に人種と肌の色の違いを導入しました(参考 :iOS 8.3配布開始。絵文字が大幅に強化、バグ修正も : ギズモード・ジャパン)。現段階では、肌の色を 5 種類から選べるとか。リンク先のサンプルを見る限り、なんだか細々していて、対応も使い分けも大変そうですけど……。

このように、日本人だけのガラパゴス化した国内ルールが反映された絵文字が、世界でちょっとトラブルを起こしてしまっているわけです。採用したアップルやグーグルがその対応に追われているという事態に、日本人としては、なんだかいたたまれない思いでおります。

ちなみに、先日のニューヨークタイムズ紙では、カバ雌山羊の絵文字がないことに憤慨したジャーナリストが、「アメリカ人にはアメリカ版の絵文字が必要」という記事を書いていました(America Needs Its Own Emojis – NYTimes.com)。なぜそんなにもカバの絵文字の会話に必要なのか、日本人のわたしにはちょっとピンと来ないのですが……。絵文字が世界共通言語になるには、まだまだ、多くの試練が待っていそうです。

おまけ : 「スピード翻訳」でご依頼いただく原稿には、絵文字や機種依存文字のご使用はお控えくださいね。

photo : “Texting Emoji” by Intel Free Press


「着る」はなぜ中国語で「穿」なのか

4月 14th, 2015 | Posted by liang in 小ネタ - (「着る」はなぜ中国語で「穿」なのか はコメントを受け付けていません)

'我和余晓曼 大脚 小鞋' by evic dong

こんにちは! liang です。初夏のような暑さになったり、急に花冷えになったり、春らしい変わりやすいお天気(昨日今日は全国的に雨ですね……)ですね。何を着ればいいのか、コートは片付けても大丈夫なのか……いろいろ惑わされる毎日です。

着る」「はく」といった、衣服を身につけることを表す言葉は、日本語と中国語で感覚の違いがあります

日本語の「着る」は、衣類などをからだ全体や上半身を覆うように身につけるイメージですね。「セーターを着る」のように使います。

『広辞苑 第六版』(岩波書店)の「着る」の項に「現代では、袴(はかま)・ズボン・靴下などは『はく』、帽子は『かぶる』、手袋は『はめる』を用いる」とあるように、身につけることを表す言葉を使い分けています。

中国語では、セーター、ズボン、靴下を身につけることをみな「穿 chuān」と言います。さらに靴やスカートも「穿」です。

ちなみに、日本語の「ズボンをはく」の「はく」は、漢字で書けば「穿く」です。日本語では、ズボンやスカートにしか使わない「穿く」は、中国語では衣類なら何でも「穿」なんですね。

帽子、手袋を身につけることを「戴 dài」と言います。なお、眼鏡やイヤリングも「」です。

中国語「穿」の基本的な意味は「穴に通す」ことです。日本語の「穿つ(うがつ)」と近いイメージですね。「穴に通す」というイメージが頭にあると、セーター、ズボン、靴下、スカート、靴を身につけることが「穿」である理由がわかります。どれも筒状の穴に手や足を通して着用するものです。身につける動作に着目した言い方ですね。日本語にも「袖を通す」という言い方がありますし、納得感があります。

」はどうでしょうか。日本の辞書『講談社中日辞典 第三版』には「(頭の上や身体の一部に)のせるかぶせる」「(装身具などを)身につける」と出ています。

日本語の「戴く(いただく)」にも「頭にのせる」という意味がありますから理解しやすいのですが、中国語の「」はさらに意味が広いのですね。中国の辞書『現代漢語詞典 第 6 版』(商務印書館)の記述はもっとシンプルで、「ものを頭、顔、首、胸、腕などに置く」(筆者訳)とあります。

もうひとつ、ネクタイやベルトを「締める」ことを中国語では「系 jì」と言います。「」は「結ぶ」という意味ですから、日本語の感覚と近いですね。

穿」「」「」の用例をまとめて見てみましょう。

【1】 穿 毛衣 (セーターを着る)

【2】 穿 裤子 (ズボンをはく)

【3】 穿 袜子 (靴下をはく)

【4】 穿 裙子 (スカートをはく)

【5】 穿 鞋 (靴をはく)

【6】 戴 帽子 (帽子をかぶる)

【7】 戴 手套 (手袋をはめる)

【8】 戴 眼镜 (眼鏡をかける)

【9】 戴 耳环 (イヤリングをつける)

【10】 戴 花 ([胸や髪などに]花をつける)

【11】 戴 手表 (腕時計をはめる)

【12】 系 领带 (ネクタイを締める)

【13】 系 腰带 (ベルトを締める)

【14】 系 鞋带 (靴ひもを結ぶ)

「脱ぐ」「はずす」に当たる「穿」の反義語は「脱 tuō」、「」の反義語は「摘 zhāi」、「」の反義語は「解 jiě」です。

なお、日本語「着る」には「濡れ衣を着せる」といった言い回しがありますが、中国語「穿」「」にも慣用語がありますので紹介します。

【15】 穿 小鞋 (意地悪する) ※ 窮屈な靴を無理にはかせることから

【16】 戴 高帽子 (おだてる) ※ 昔、官吏が(背の)高い帽子をかぶったことから

ちなみに、日本語では「はく」靴は「履く」ですが、中国語ではこれまた「穿」なんですね。足を靴の穴に通しまではしませんが、中国語の「穿」の用法がわかっていれば中国語では「穿」なのも納得です。

改めて私がふだん使っている言葉について考えてみました。帽子をかぶる習慣がないので「かぶる」はほぼ使わず、上半身は「着る」、下半身は「はく」という単純な分け方。手袋、腕時計、ネクタイ、ベルトなどはすべて「する」で済ませ、「はめる」「締める」は使っていないようです。単純ですね……。みなさんはいかがでしょうか?

photo : “我和余晓曼 大脚 小鞋” by evic dong


まだ直接会ってはいないけどメールで「はじめまして」は英語で何という?

4月 10th, 2015 | Posted by maggy in 小ネタ - (まだ直接会ってはいないけどメールで「はじめまして」は英語で何という? はコメントを受け付けていません)
'e-commerce' by Garfield Anderssen

こんにちは、maggy です。新年度や新学期は新たな出会いの月ですね。とはいっても、最近はメールやソーシャルメディア、オンライン会議などを通して、オンラインで挨拶をしてから、後々に直接会う……なんてことも増えてきているのではないでしょうか。

はじめましての挨拶は、英語では Nice to meet you. と習いましたよね。

このままでも通じますが、まだ直接会ってもいないのに、この表現を使うのは、ちょっと違和感があります。それは英語ネイティブにとっても同じ。そんなときに彼らがよく使うのが、こんな表現です。

Nice to e-meet you.

オンライン(ウェブ)で会うということで、e-メール(電子メール/ウェブメール)と同じように、頭に e- を付けて、meet の代わりに e-meet と言ったりするのです。

あるいは、こんな風に meet に (クォーテーション)を付けることで、(まあ、まだ 会って はいないけどね!)というニュアンスを出すこともあります。

Nice to “meet” you.

ちょっとこなれた感じに聞こえるはず。ぜひ使ってみてください(実際に直接会ったらこんな感じのジェスチャーが入るのでしょうか?いや、実際に会うわけだから入らないですね……orz)。
※ リンク先は YouTube の動画です

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なお、はじめましてという英語表現は、Nice to meet you. だけではありません。こんな別の言い方もあります。

It is very nice to meet you.
I am glad to meet you.
(It is my) Pleasure to meet you.
(I am) Pleased to meet you.
(It is) Lovely to meet you.

meet の部分を e-meet や、クォーテーション付きの “meet” に差し替えて、バリエーションを持たせてみてくだい。

そして最終的に直接会えた暁には、こんな表現でお礼のメールを送りましょう。

It was so nice to finally meet you (face to face).
ようやく(直接)お目にかかれて大変嬉しかったです。

It was nice talking with you finally (face to face).
ようやく(直接)お話できて嬉しかったです。

この春、皆さんの元にたくさんの良き出会いが訪れますように!

おまけ : 以前読んだある英語の SF 小説で、近未来がこんな風に描かれていました。インターネットも宅配の通信網も高度に発達し、さらには息ができないほど大気汚染がひどくなったため、人間は生まれてすぐ一人ずつカプセルのなかに住んでいます。そこでは親子ですらオンラインで会うことが当たり前になり、直接、人間が顔と顔をあわせて会うことは大変珍しい世界で……というお話です。

将来、ありえないこともないのでは……と思える設定ですよね。かつて画期的だった e-メールが普及して、今や単に「メール」と呼ぶように、いずれはオンラインだけで会うことへの違和感も薄れて、 e-meet なんて、言わなくなるのかも(単に meet と言うようになるかも)。そういえば「スピード翻訳」は、オンラインだけでの接点で、実際には会ったこともない翻訳者と依頼者の方が出会っているのですね! まさに e-meet!気に入った翻訳者と出会えた場合は、ブックマークもお忘れなく♪ 次回以降、指名して翻訳を依頼することもできますよ。

photo : “e-commerce” by Garfield Anderssen


じゃがいも、かぼちゃ、みかんの意外な共通点

3月 25th, 2015 | Posted by maki in 小ネタ - (じゃがいも、かぼちゃ、みかんの意外な共通点 はコメントを受け付けていません)
satsumas on flickr

こんにちは、maki です。この冬は昨年に続き、毎日みかんを食べていました。せとかという品種で、いわゆる温州みかんとは別のものになります。とても甘くて、皮(外皮)も非常に薄くて、食べやすいフルーツです。だいたい2 月上旬ごろに市場に出回りはじめるのですが、もうそろそろシーズンも終わりそうな感じになってきました。また、来年の冬を楽しみにします。

さて、きょうのテーマですが、じゃがいもかぼちゃみかんに共通することって何だと思いますか?正解は、名前の由来です。

ご存知の方も多いでしょうが、じゃがいもは、南米アンデス山脈の高地が原産の植物で、ジャカルタを経由して、16世紀末に南蛮船によってもたらされたと言われています(異説もあります)。ジャカルタは、以前はジャガトラと呼ばれていたとか。ジャガトライモが、いつの間にかジャガイモになったそうです。
※ Cf. JA きたみらい – じゃがいも栽培の歴史

かぼちゃも南北アメリカ大陸が原産の植物で、カンボジアを経由して、16 世紀ごろにこれまた南蛮船に乗ってやってきたようです。どちらもどこから日本にやってきたのかという経由地の地名が名前の由来になっています。

じゃあ、みかんは、どこかの国のミカンによく似た地名の場所から、またはそういう名前の経由地から輸入されたのか……ということになるのですが、違います。地名が名前の由来は正しいのですが、行き先はアメリカです。

Wikipedia にも Citrus unshiu の項目に、satsuma mandarin / satsuma orange と紹介されています。中学生のころみかんは、mandarin orange と習いましたが、これは中国のオレンジという意味で、温州みかん(またはその近縁種)のこと。温州とは、中国浙江省の温州を意味します。しかし、ここが原産地というわけではなく、原産地は日本。しかも鹿児島県出水郡長島町が原産地でほぼ間違いないだろうという研究が発表されています(Cf. Wikipedia – ウンシュウミカン)。

'Welcome to Satsuma' by Jimmy Emerson, DVM

海外での satsuma の広まりは、18 世紀のイエズス会によるルイジアナでの果樹園栽培が始まりだそうです。明治期には日本のアメリカ大使館の関係者によって、鹿児島のみかんが持ち込まれました。その果樹園にちなんだ町として、アラバマ州フロリダ州テキサス州ルイジアナ州Satsuma という名前の町があるようです。どの町も南部の暖かい気候のグレープフルーツなど柑橘類の産地と近い地域のようです。
※ 右の写真は、アラバマ州の Satsuma。面積 336.5 / km2 に人口 6,000 人ぐらいののんびりとした町のようです。Satsuma を栽培していた Pace Orange Orchard という果樹園に因んで、Satsuma という町の名前になったそうです

トップの画像は、写真共有サイトで satsuma と検索した結果ですが、Google で検索しても同様に、みかんがたくさん候補に上がってきます(たまに紛れ込んでいる陶器は、薩摩焼でしょうかね)。

'Orange and Cloves' by  Aprile C

また、みかんは、Christmas orange とも呼ばれるそうです。冬の果物ですので、何の不思議もない話ですね。日本だとこたつとセットになりますが、英語では Christmas とセットになるようですね。Christmas orange で画像検索すると、おもしろい画像が検索結果に上がってきました。赤いリボンで縛られたオレンジ(または、みかん)の皮に何かくっついています。これは、クローブ(丁子)なんだそうです。皮に小さな穴を開けて、そこにクローブをぷすぷす刺して作るようです(作り方はこちら → instructables – Pomander ball Christmas gift by outofthewoods)。柑橘系の香りとクローブの香りで、クリスマスを楽しむのだそうですよ。表皮に穴を開けるのですから、シトラスのさわやかな香りとスパイスの香りで部屋が満たされそうです。こんな楽しみ方もあるんですね♪
Cf. Sweet Mabel Blog – Orange and clove pomanders

photo : “satsumas” by Dave Morris / “Satsuma” by Tamara Polajnar / “If Sarah Lucas was to peel a satsuma…” by Dick Jones / “satsuma” by Tim Ereneta / “Citrus Explosion” by K.Hurley / “Satsuma” by Carol Foil / “Satsuma mandarin” by Eliza Adam / “Satsuma” by Mr. Greenjeans / “Welcome to Satsuma” by Jimmy Emerson, DVM / “Orange and Cloves” by Aprile C


大統領はペンが大好き?

3月 12th, 2015 | Posted by maki in 小ネタ - (大統領はペンが大好き? はコメントを受け付けていません)
'Barack Obama signing documents outside the Oval Office.jpg' by The Official White House Photostream

テレビのニュースを見ていたら、オバマ大統領がある法律の調印式に臨んでいる様子が流れていました。日本では調印式といいますが、英語では signing ceremony。オバマ大統領が、その署名をする際に、左手の脇に何本ものペンを置いていて、ひっきりなしにペンを取り替えて、サインしていました。それまでにも何回かこの様子は見かけたことがあるはずなんですが、そのときは妙に気になって見入ってしまいました。上の写真は、その場面ではないのですが、女性が複数のペンを持って控えているのがよくわかると思います。まさにこんな感じでした(ホワイトハウスの大統領執務室である the Oval Office の外でサインしているところだそうです)。

Wikimedia Commons - Barack Obama signature.svgオバマ大統領のサインは、右のとおりです。書きなれたサインでしょうから、ペン一本であれば、さらさらっと署名できちゃうと思いますが、これを複数のペンを取り替えながら書くと、きれいなサインにならないのではないかと心配になってしまいます。きっと、O の字と b の字の部分は書き分けができそうですが、特に最初の 1 文字めの B は複数のペンで書けるのかすごく気になります。

Wikipedia の Signing Ceremony のページによると、過去最大の本数のペンを使用したのは、リンドン・B・ジョンソン元大統領。1964 年の Civil Rights Act(公民権法)の調印式に 75 本以上のペンを使ったとか。このページには、どうして何本ものペンを使うのかについても記載がありました。これは、その調印する法律の制定までに尽力した議員や、支援者、およびその関係者に謝意を伝えるために贈るのだそうです。先ほどの Civil Rights Act の制定の際には、司法長官であったロバート・F・ケネディ(ケネディ元大統領の実弟)や、キング牧師にも贈呈されました。確かに、調印時に使用されたペンを大統領からプレゼントされたら、かなりの記念になりますよね♪

'President Obama Signs Health Care Bill' by Talk Radio News Serviceこの複数のペンの使用については、秘書の Lisa Brown さん(上の写真の大統領の隣に座っている女性)が、YouTube の「大統領のペン All the President’s Pens」で詳しく教えてくれています。この動画で紹介されている動画は、いわゆる Obama Care という医療保険制度法の調印式ですが、大統領が使ったのは 22 本(!)だとか。かなり多いですね!このペンをもらえるのは、大統領を取り囲む人たち。こんな感じで何人もの人たちに囲まれた調印式の写真もよく見かけますね。
※ この動画を最後まで見ると、大統領がどうやって何本ものペンを使ってサインするかがわかりますよ。

しかし、すべてのアメリカの大統領が何本もペンを使ってサインするわけではないようです。ジョージ・W・ブッシュ前大統領は、調印式は 1 本のペンでサインするのを好んだそうです。そして、未使用のペンを関係者にプレゼントしたのだとか。それもひとつの手ですが、どうせなら実際に使ったものの方がありがたみが増しそうですね。こうした調印式に関わる話題は、アメリカ人ならばごく日常の話題のひとつかと思っていたのですが、TIME の”Why Did Obama Use So Many Pens to Sign the Health Care Bill?” という記事で取り上げられていました。意外ですね。

おまけ : いろいろ調べたのですが、オバマ大統領が使っているのは、CROSS というメーカーの Townsend Black Lacquer / Rhodium Plated Rollerball Pen という水性ボールペンのようです(別に CROSS の製品が御用達ということではなく、別のメーカーを選ぶ大統領もいるそうです)。万年筆ではないんですね。オバマ大統領が調印式に使うものは特注品で、大統領のサインが入っているようです(市販されているものにはサインはありません)。市販されているペンでも 1 本 20,000 円弱!このプレゼント用のペンの支出はどこから出ているんでしょうね?

photo : “Barack Obama signing documents outside the Oval Office.jpg” by The Official White House Photostream / “Barack Obama signature.svg” / “President Obama Signs Health Care Bill” by Talk Radio News Service


ごま油、綿実油、ひまし油、石油?

3月 6th, 2015 | Posted by maki in 小ネタ - (ごま油、綿実油、ひまし油、石油? はコメントを受け付けていません)
’Oil well pump jacks’ by Richard Masoner / Cyclelicious

ごま油(sesame oil)は、ゴマの種子(sesame seed)を圧縮して製造します。綿実油(cottonseed oil)は、ワタの種子(cottonseed)を圧縮して製造します。残念ながらひまし油※は、ヒマシの種子ではなく、トウゴマの種子を圧縮して製造するなんだそうです(トウゴマの別名が「ヒマ(蓖麻)」)。
※ ひまし油は、食用ではなく、石けんや潤滑油、塗料、ワックス、医薬品(下剤)などに利用される油です

しかし、石を絞っても、石油は出てこないですよね。語源をたどってみると、明治初期に輸入された petroleum の訳語として採用されたのが石油だったようです。英語の語源から調べてみると、15 世紀あたりに輸入された単語で、

  • を意味する petra
  • を意味する oleum

の組み合わせから生まれた単語だったとか。petra という単語の音からは柔らかそうなものを想像しますが、のことなんだそうです。英語の stone は、フランス語では pierre、イタリア語ではpietra、ギリシャ語では πέτρα(pétra と発音)。一方、デンマーク語では sten、オランダ語では steen、ドイツ語では Stein。英語が 2 人の親を持つことがよくわかる事例です。

'Petrified Forest, Arizona' by  minniemouseaunt

petra からは、petrify という単語も生まれています。何か聞いたことがあるなあと思ったら、アメリカ・アリゾナ州の Petrified Forest National Park(化石の森国立公園)を思い出しました(テレビで見ました)。この公園には、石化した古代の樹木がゴロゴロしています。ん……石化?RPG ゲームの FINAL FANTASY の石化も英語版では、Petrify と訳されているんですね(アイテムの Gold Needle か、白魔法の Stona または Esuna で治ります♪)。

日本には石油資源がないと言われていますが、まったくゼロだったわけではありません。新潟県新潟市秋葉区新津地区には油田があって、石油の里と呼ばれています(現在は採掘されていない)。この街には、そのシンボルでもある蒸気機関車、油田のやぐら、さつきがあしらわれたマンホールをよく見かけます。
※ 新津は、信越本線、羽越本線、磐越西線が乗りいれる機関区で、新津車両製作所もある鉄道の町でもあります

新津油田は、国内でも有数の油田で、1917 年(大正 6 年)には、年間 120,000 kℓ を算出したそうです。ある論文によると、

日本の石油産業の歴史を振り返ると,1910年代のごく限られた時期に石油製品需要に対する国産石油の自給率が5割を超えたが,第一次世界大戦後の1920年代に入ると輸入原油に依存する時代を迎えた。

第一次世界大戦後の輸入原油精製 ─株式会社石油共同販売所の事例─ (伊藤武夫, 2009, p. 1)

……とあります。この時期が最大の産出量のタイミングと一致しているので、かなりの量を採掘していたことになりますね。
※ 当時は、秋田の油田なども操業していたようです

国産の石油は、古くは『日本書紀』にも登場し、天智天皇(在位 : A.D. 661 – 671)の巻(第廿七)に「越國獻燃土燃水」※(越国は、燃える土燃える水を献上した)と書かれています。貝原益軒の『大和本草』(1709)の巻三に石脳油という項目が見られ、臭水(くそうず)として紹介されいます(本草ニアリ是越後ニアル臭水ナルベシ田澤ノ中ニアリ土ヨリ出ル油ナリ……)。しかし、江戸時代には石脳油と呼ばれていたことがわかります。洋学を経由して入ってきた単語なのかもしれませんね。
越国とは現在の新潟県あたりを指します。燃土(燃える土)は、アスファルトのことだと考えられます

photo : “Oil well pump jacks” by Richard Masoner / Cyclelicious / “Petrified Forest, Arizona” by minniemouseaunt


アメリカでは、いまでも小切手は現役!

2月 27th, 2015 | Posted by maki in 小ネタ - (アメリカでは、いまでも小切手は現役! はコメントを受け付けていません)
'Travelers Cheque von American Express' by Valentin Wittich

「そういえばトラベラーズチェックっていまでもあるのかな?」と先日ふと思い出しました。一昔前までは、海外旅行に行くときとかに、よく使われていました。ご存じない方のために Wikipedia の記述を引用しておくと、

旅行や出張など海外渡航の際に、多額の現金を持ち歩かなくても済むように発行される外国旅行者向けの小切手。

……というものがトラベラーズチェックです。銀行などで買える定額小切手(額面が事前に印刷されている)で、それを旅行前に購入しておきます。例えば、1,000 米ドル分購入すると、100 米ドルが 5 枚、50 米ドルを 10 枚のように、額面が印刷されたトラベラーズチェックが渡されます。購入したらすぐにサイン(ホルダーズサイン / Holder’s Signature)をします。現地で買物をするときや両替商の店で換金するときにもう一度サイン(カウンターサイン / Countersignature)をします。そのサインが一致していれば、正当な持ち主ということで、現金化できるというものでした。サインをするのは面倒なのですが、現金を持ち歩かないので、安心というメリットがありました(紛失時の再発行や現金よりも換金レートがすこし有利というメリットも)。

先ほどの Wikipedia をもうすこし読み進めていくと、

20世紀末頃まではよく使われていたが、日本国内では2014年3月31日を持って全ての販売が終了した。

……だそうです。あれー、そうなんですねー。1 年近く前に終了していたとは……。実際、自分も 1991 年にアメリカに行ったときを最後にそれ以降買った記憶はまったくないですね。いまは、クレジットカードが普及していますから、別にトラベラーズチェックなんて買わなくても、旅行中の支払い程度であればクレジットカードで十分事足りてしまいます。現金を持ち歩くというような危険性もありませんね(クレジットカードの場合、スキミングには気をつけないといけません)。海外に住むとなると話が違ってくるのですが……。

トラベラーズチェック(旅行小切手)は廃れても、アメリカでは小切手はいまだにかなり流通しているようです。インターネット上では PayPal のような支払い方法もありますが、調べてみたところアメリカは小切手がまだまだ現役のようです。日本で小切手というと企業が振り出す小切手が思い浮かびます(映画の中で「お前の欲しい金額を書け」とか言いながら白紙の小切手をボスがポンと渡したり、「オレが欲しいのはカネじゃない!」とか言って主人公が破り捨てたりするアレ)が、アメリカでは個人でも小切手を使うシーンはまだまだ多いようです。家賃などの支払いなどにも使いますし、Google の AdSense の支払いにも使われているようです(日本国内では、銀行口座への振込のようです)。大学の授業料の支払いも小切手だったように記憶しています(90 年代初頭)。

'Small-SS_checkbook' by  RikkisRefuge Other

アメリカで小切手を使えるようになるためには、まず銀行口座の開設が必要です。アメリカでは、Checking Account という口座と Saving Account という口座の 2 種類があります。小切手を作るのに必要なのは、前者の Checking Account になります。日々のお金の動き(給与の支払先やさまざまな支払いなど)に対応する口座で、入出金に便利なようにキャッシュカード(ATM card / bank card)や小切手帳が発行されます(chequebook / checkbook)。口座維持費がかかり、利子などは付かない場合も多いです(銀行によって、また預金残高の多寡によって、条件は変わります)。Checking Account は、日本語では当座預金口座と訳されたりしますが、日本に住んでいて、個人で当座預金口座を開設する人はほとんどいないですよね(企業向けの決済口座という意味合いが強いですよね)。
Saving Account はその名のとおり貯蓄用の口座で、利子が付きます

'CanadianChequeSample.png' by Airodyssey

小切手の切り方(使い方)ですが、ちょっと面倒です(たいしたことではないのですが)。上記のサンプルは、カナダの小切手のイメージのようですが、アメリカの小切手とかなり近いので、これで説明します。

  • PAY TO THE ORDER OF : 振出先(支払先)の相手を記載
  •                / 100 Dollars : 支払い金額を記載

を記載することになっています。支払先の相手の記載はいいのですが、                / 100 Dollars(または、                Dollars)の欄に

  • One Hundred Dollars and──────────55 / 100 Dollars
    または、One Hundred Dollars and 55 / 100────────── Dollars

……のように、数字でなくアルファベットで書かないといけないのです(小数点以下のいわゆるセントの部分は数字で OK)。100.55 ドルの場合は、それでいいのですが、1235.65 ドルの場合は

  • One Thousand, Two Hundred Thirty-Five Dollars and──────────65 / 100 Dollars
    または、One Thousand, Two Hundred Thirty-Five Dollars and 65 / 100────────── Dollars

……と書かないといけません。アメリカで小切手生活を始めたばかりのころは、正しい書き方 ※ もわからず、わかったところで書き慣れなくて、何枚も無駄にした記憶があります(その場で破ってしまえば、大丈夫)。小切手帳を銀行でもらうと、ある程度の厚さがありますので、なんとなくお金持ちになった気がしますが、それは幻想です。支払いできるのは、口座に入っている金額だけですから。
※ 正書法という書式に従うようです

ざっと簡単に説明しましたが、日本とアメリカが異なるように、国によって、銀行によって、各種口座の扱いはバラバラです。お気をつけください。

おまけ : 日本では、支払金額を刻印するという慣習があります。こんな機械で小切手に刻み文字を刻印するというのもあるんですよね(小切手を触ると、刻印された文字がざらざらとした手触りがあります)。いずれにしても普段の生活で個人的にお目にかかることはなさそうですが。

photo : “Travelers Cheque von American Express” by Valentin Wittich / “Small-SS_checkbook” by RikkisRefuge Other / “CanadianChequeSample.png” by Airodyssey