中国歴史ドラマにみる中国語の一人称表現の豊かさ

6月 29th, 2015 | Posted by xiaofan in 小ネタ

city

大家好! xiaofanです。語学習得に生かすためにテレビドラマを観ている、という方も多いのではないでしょうか。ドラマは、用いられる表現だけでなく、セリフの間合い、声のトーン、表情や相手の反応など、市販教材には盛り込まれない情報が満載です。脚本がよければ「続きを観よう」というモチベーションのおまけまでついてくる、一石何鳥にもなる素材ですね。

さて、中国語ドラマでは歴史モノが熱い!です。台湾で今、まさに放送されているのは、則天武后を主人公にした《武媚娘傳奇》です。日本でも放送されて話題になった作品といえば、清代の後宮の様子を描いた『宮廷の諍い女』(原題:後宮甄嬛傳)、現代女性が 9 人の皇子が跡目争いを繰り広げる真っ只中にタイムスリップする『宮廷女官 若曦(ジャクギ)』(原題 : 步步驚心)、三島由紀夫もその小説の題材にした『蘭陵王』、さらには日本でお馴染みの魏呉蜀の群雄が割拠する『三国志』(原題:三國)など、さまざまな作品が挙げられます。

これら作品を観ていると、中国の歴史の豊饒さに圧倒されつつ、現代では使われない表現がたくさんあることに気がつきます。中でも大きく違う点は、その一人称表現です。中国語で「わたし」というと「(wŏ)が現代語の代表格ですが、歴史ドラマには「わたし」にあたる表現がたくさん出てきます。代表的な一人称をご紹介しましょう。

一人称 その一人称を使える人
(zhèn) 皇帝
哀家(āi jiā) 皇太后、皇太子妃。ただし、夫を亡くした者のみ。
本宮(běngōng) 皇后、貴妃、姫など
末將(mò jiāng) 武将が上官に対して用いる
(chén) 官吏が仕えている主人に対して用いる
在下(zàixià) 一般的な一人称表現。文官、軍師、武将など広く使う
奴才(núcái) 宦官が皇帝に対して用いる
奴婢(núbì) 女官が皇帝や仕えている貴妃に対して用いる

こうして整理してみると、一人称によって、主従関係やその人の立場や職位が明確化されることがよくわかります。日本語では、敬語を使って文末を言い分けながら相手との関係性を表現しますが、中国語では、一人称で関係性を言い分けています。このことはつまり、アプローチは違っても、自分と相手との距離感を言語化する、という意味では共通していると考えられます。もっとも、中国語の表現はどれも使われなくなってしまったので、想像でしかないのですが。

日本語は一人称の表現が豊富な言語だといわれます。ちょっと考えただけでも、私、俺、僕、あたし、わし、うち、身ども、小生、当方、予、拙者など、その豊富さは特有のものだとされてきました。実は中国語にも豊かな言い回しがあったんですね。ちなみに、最近の台湾では、ネットでよく見られる一人称表現「(ǒu)」もあるのだとか。

歴史ドラマでは、とりわけ時代考証やセット、衣装などに注目がいきやすいですが、こういった表現の違いにも気をつけてみると、中国語の世界がぐっと広がります。

以上、繁体字どころ台湾から xiaofan でした。再見囉~!

photo : “city” by Maki

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