こんにちは、maki です。TBS の『THE 世界遺産』を見ていました。アフリカ各地の世界遺産をダイジェストで紹介していましたが、ふと、『野生の王国』という番組を思い出しました。1963 年から1990 年まで放映された長寿番組。全部で 1050 回も放映されたんですね。TBS の系列局でもある MBS(毎日放送)の番組です。
『野生の王国』。なんとなくイメージは伝わるのですが、誰がその王国の王なんだろう、ライオン?……などと思っていました。ちょっと調べてみたのですが、『野生の王国』は、アメリカの動物番組 Wild Kingdom (1963 – 1988)の日本語版として放送されはじめたという歴史があるんですって。その日本語訳だったんですね。だったら、「百獣の王」(king of beasts)が支配する王国というイメージですかね?
この kingdom は、一般的には「王国」と訳すものですが、実はこんな意味もあるんです。animal kingdom という言葉があります。そのまま訳してしまうと「動物の王国」、「動物王国」になってしまいます。しかし、この kingdom は、文脈によっては日本語では「界」と訳すのが正解です。つまり、「動物界」 。となります。「動物界」 の「界」 は、「世界」や「芸能界」の「界」とは違った意味合いを持っています。
- kingdom
(自然界を三大区分した)界
the animal [the plant, the mineral] kingdom
動物[植物, 鉱物]界.出典 : プログレッシブ英和中辞典(小学館)- kingdom
a realm or province of nature, especially one of the three broad divisions of natural objects:
the animal, vegetable, and mineral kingdoms.出典 : Dictionary.com
「動物界」の他に「植物界」、「鉱物界」があるんですね。鉱物の王は金?植物は……うーん。kingdom を「王国」と考えるからいけないんですね。
てっきり
kingdom = king + dom(ain)(王+領土)
かと思ったのですが、
kingdom = king + -dom
どちらも古英語時代からある単語と接尾辞。-dom は、状態を表す接尾辞だそう。freedom や wisdom にも使われています。
なぜ、kingdom を「界」と訳したのかはよくわかりません。「女三界に家なし」という言葉があります。この「三界」は「欲界」、「色界」、「無色界」という「界」で構成される「全世界」を表す仏教用語だとのこと。自然界を 3 つ(動物界、植物界、鉱物界)に分けるのと似ているということで、「界」を kingdom の訳語に当てたのかもしれないですね。
西洋の文物が大量に流入してきた時代にいろんな単語が日本語に翻訳されました。概念そのものが日本に存在していなかったものやことを訳出した当時の人たちの発想や知識には感心させられます。翻訳しようにも、その訳語がないわけですから、訳語を作り出さなければならないわけです。いまならそのままカタカナ表記でおしまいということもできそうですが、そうもいかなかったのでしょう。翻訳者はこういった多義語も知識として持っていないと仕事にならなさそうですね。
おまけ : 先ほどの wisdom ですが、 wis は、古英語の時代から使われているもので、「博学な」とか「教養ある」という意味を持ちます。ここから派生したのが wizard。元々の意味は、「哲人」、「賢人」。「魔法使い」は後に付け加わった意味のようです。
photo : “King of Beasts” by Thomas Hawk