英語の神さま、日本語の神さま

8月 20th, 2014 | Posted by maki in 小ネタ

'greek god' by  Giovanni

英語では、「神」のことを God と言います。日本では「神」は、過去において一時期ある人たちからは「でうす」と呼ばれていました。ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、キリスト教の伝来したころの話です。フランシスコ・ザビエルらの宣教師が、キリスト教の布教をするときに「デウス」を信仰するよう当時の日本人に伝えたようです。この「デウス」は、ラテン語の Deus をそのまま日本に持ち込んだものです。この「デウス」がギリシャ神話の「ゼウス」と音韻がとてもよく似ていて、その関係がどうなのかが前からとても気になっていました。
※ 「でうす」から「だいうす」と変化し、京都には昔「だいうす町」という地名もあったようです

元々、deus は本来「ひとりの男神」を表す言葉だったようです。その起源は、インド・ヨーロッパ祖語の *dyēus (ディヤウス)にあり、プロト・インド・ヨーロッパ人の多神教の最高神を指し示す言葉であったようです。それを源に、ギリシア語の ΖΕΥΣ ( = Zeus)となったり、ラテン語の deus となりました。

ギリシャ神話はみなさんもご存知のように、たくさんの神々が登場します。その最高神である「ゼウス」と、一神教であるキリスト教の「デウス」が結びつかなくて、それが以前から気になっていたのです。なるほど、「デウス」と「ゼウス」の語源が一緒だったのですね

先ほど deus と書きましたが、大文字で書く Deus は実は違うものです。Deus は、キリスト教の広まりとともに、一神教の唯一神を意味するようになりました。多神教の神は deus とは区別されたようです。

さて、英語の話です。英語では、God なわけですが、これはラテン語起源の言葉がイギリスに伝わる前から使われていた歴史の古い言葉です。この昔の英語、古英語の起源はドイツ、オランダあたりの言葉と源流は同じです。そのため、現代でもドイツ語では Gott、オランダ語では God と言います。

つまり、昔イギリスに住んでいた人たちは、自分たちの使い慣れた God で、キリスト教の唯一神を呼ぶようになったんですね。「かみ」もそうですが、「やま」や「かわ」など、身近なものほど古い言葉の名残は残りやすいものですが、英語においても慣れ親しんだ単語に言語の歴史が残っているんですね。
※ 英語にも Godgod でもラテン語同様、前者は唯一神、後者は多神教のひとりの男神という使い分けになっています

おまけ :このあたりの英語の歴史的な話題は、「海=「くじらの道」…歴史ロマンあふれる英語のご先祖さま「古英語」の表現」でもご紹介していますので、合わせてお読みいただくといいでしょう。

photo : “greek god” by Giovanni


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