海=「くじらの道」…歴史ロマンあふれる英語のご先祖さま「古英語」の表現

8月 13th, 2014 | Posted by maggy in 小ネタ

こんにちは、maggy です。お盆の時期は、故人やご先祖さまに思いを馳せ、感謝する時間を取りたいですね。

さて、このブログではこれまでも、英語の語源や言葉の歴史の小話をお届けしてきました。改めましてこの度は、『クリスタル:英語史入門(Crystal The History of English)』(David Crystal 著/久保内瑞郎 編/山縣宏光 編、金星堂、1993)を紐解き、英語のご先祖さまについて調べていました。ちょっとご紹介します。

英語の原型となるのが、Old English(古英語)と呼ばれる言葉です。AD 449 年、現在のオランダ、ドイツ、デンマークから海を渡ってやってきたアングロ人やサクソン人、ジュート人の侵略によってブリテン島(イギリス)にもたらされました。Anglo-Saxon(アングロサクソン語)とも呼ばれます。

現代英語のうち使用頻度の高い 2 万語において、この本来語となる Old English の占める割合はたった 2 割ほどだとか。残りの約 8 割が、後のヨーロッパ大陸からの侵略の歴史の中で流入したラテン語フランス語ギリシア語などからの借用語になるそうです。

日本語では大和言葉と漢語という言語が交じり合っていますよね。それと比較すると、現代まで生き残っている古英語時代の英語は相当少ないと言えます。今回掲載した写真は、11 世紀(日本で言えば平安時代後期)に書かれた「主の祈り」。17 世紀(日本で言えば江戸時代前期)に書かれた「主の祈り」とちょっと比較して見ると……

11th Century version

Fæder ure þu þe eart on heofonum;
Si þin nama gehalgod
to becume þin rice
gewurþe ðin willa
on eorðan swa swa on heofonum.

17th Century version

Our Father, which art in heaven,
hallowed be thy name;
thy kingdom come;
thy will be done,
in earth as it is in heaven.

左が古英語、右が 17 世紀の英語。似ているといえば、似ているようにも見えます。いちばんわかりやすいのは、Fæder = Father でしょうか。これは古英語時代からの生き残りと言えます。

今こそ存在感は薄いものの、この Old English(古英語)の言葉の特徴というのが、なかなか興味深いです。まず、neata ( = cattle) や swefn ( = dream / sleep) という単語あたりは、全く想像もつかないほど現代英語と異なりますが、beor( = beer) なんかは現代英語と似ています。そう、現代英語の beer も、古英語の生き残りのようです。

さらに特徴的なのが、この時代の詩や文学において、古英語ではある事象を 2 つ以上の言葉を組み合わせた比喩のような造語で表現する、という点です。

例えば、下記の 3 語の例を見てみましょう。

現代英語 (日本語訳) = 古英語 古英語の現代語訳 (日本語訳)
sea (海) = hronrad whale-road (くじらの道)
person’s body (人間の体) = banhus bone-house (骨の家)
sword (剣) = beadoleoma battle-light (戦いの光)

つまり古英語では、を「くじらの道」、人間の身体を「骨の家」、を「戦いの光」と表現していたというのです。
※ 古英語の起源はゲルマン祖語。そこから派生したのが現在の英語、ドイツ語、オランダ語、北欧諸言語が含まれます。そう考えると、banhusbanbone (オランダ語でも “bone”)とつながりがありそうですし、hushouse (オランダ語では “huis”、ドイツ語では “Haus”)と関係がありそうです

ビールを浴びるように飲み、くじらを眺めながら海を渡ってやってきた、戦う民族。言葉を通して、そんな世界観を垣間見たような気がしました。言葉の歴史って、ロマンがありますね。

ええと、なんの話をしていたんですっけ。そうそう。ご先祖さまの話です。わたしたちって、ご先祖さまのあらゆるロマンの重ね合わせで生まれてきたんですよね。10 代遡れば 1024 人の命が関わっているわけです。こちらの歴史も壮大ですね。

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photo : “Lord’s Prayer in Old English” by Mackenzi


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