pig が pork(豚肉)、cow が beef(牛肉)―英語では動物と肉の名前が変わるのはなぜ?

5月 29th, 2014 | Posted by maggy in 小ネタ

'Kalbi Beef Ribs - close-up, raw - Win Sam Butcher AUD8.99 per kg' by Alpha

こんにちは、maggy です。「毎月 29 日は肉(にく)の日」という肉屋さんの特売のチラシや看板を見たことがあります。すると本日の 5 月 29 日は「お肉(529)の日」になりますでしょうか? 厳しいかな……。

ただし、わたしはただいま海外に滞在しているので、あいにくこのセールの恩恵をうけることはないでしょう。英語では 29 日は Twenty-ninth で、「肉」にかすりもしませんから……残念です。

ところで英語で豚は pig ですが、豚肉は pork (ポーク)、牛は cow とか ox ですが、牛肉は beef (ビーフ)などと、動物そのものを示す言葉と、その食肉用の肉を示す言葉が違うことがありますよね。

pig (豚) → pork (豚肉)
cow (牛) → beef (牛肉)
sheep (羊) → mutton (羊肉)
deer (鹿) → venison (鹿肉)

どうしてなのか気になり調べたみたところ、これは「動物を調理した人」と「その肉を食べた人」が違う言葉でその動物を呼んでいたという、英語の歴史に由来するそうです。

約 1000 年前から 300 年ほど、イギリスがフランスのノルマン人に征服された時代がありました。いわゆるノルマン・コンクエスト(The Norman Conquest of England)です。当時、動物を育てたり、調理したのが支配されたイングランドのアングロサクソン人、肉を食べたのは支配層のフランスのノルマン人で、それぞれの言葉が動物の名前、肉の名前として別々に定着していったそうです。
※ この時代に大量のフランス語がイギリスに入ってきます。そのため、現在でも英語には、フランス語・ラテン語起源の単語と古くからのドイツ語系の単語がまじりあっています

例えばノルマン人の話した古フランス語と現代の英語を並べると、その影響が分かりやすいかと思います。

古フランス語 → 現代英語
buef (牛) → beef (牛肉)
porc (豚) → pork (豚肉)
moton (羊) → mutton (羊肉)
venesoun (鹿やイノシシなどの大きな狩りの獲物) → venison (鹿肉)

※ 厳密には、buef (現在のフランス語では bœuf) = 牡牛、porc = 牡豚など、牛や豚のすべてではありません。また、古フランス語の moton は、現代のフランス語では mouton となっています

古フランス語なんて難しそうですが、肉に限定して、わたしたちも翻訳要らずで理解できるかもしれませんね。あ、以前、大流行したムートンブーツ。あれも羊の皮でできてるんですね!

おまけ :海外ではしゃぶしゃぶや煮物に使うような、薄切り肉がなかなか手に入りません。海外生活の長い日本人に恋しい食べ物を伺うと、納豆や味噌汁ではなくて、「薄切り肉」という答えが返ってきたことが何度かあります。専用のスライサーを購入する人もいるようです。

「ノルマン・コンクエスト」の時期のフランス語の流入ですが、日本語に古来からの和語と後に中国から伝わった漢語が混在しているのと似た状況かもしれませんね。(前回お伝えしたこちらの記事も言語の混在を扱っています : QUICKTRANSLATE says……「草食男子」と「暴走族」に存在する共通点?!

photo : “‘Kalbi Beef Ribs – close-up, raw – Win Sam Butcher AUD8.99 per kg” by Alpha


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