こんにちは!liang です。「おいしい」を表す中国語は「好吃 hǎo chī」(「ハオ チー」のように発音します)が有名ですが、これはふつう食べ物に対して使う言葉で、飲み物がおいしい場合は「好喝 hǎo hē」(「ハオ フー」のように発音します)を使います。どちらの言葉もウーロン茶や中華そうざいなどのテレビコマーシャルで聞いた記憶がありますので、覚えている人もいるかもしれません。
「好吃」の「吃」(「喫」の簡体字)は「食べる」という意味で、この「好」はそれが満足であること、気に入っていることを表します。直訳すれば「食べて満足である」です。「好喝」の「喝」は「飲む」ですから、「飲んで満足である」です。どちらもふつうは「おいしい」と翻訳しますね。
「食べる」「飲む」を分けずに使える「可口」(口に合う)のような言葉もありますが、「おいしい」を感覚と動作の組み合わせで表現するというのは面白いですよね。
余談ですがコカ・コーラは中国語で「可口可乐」と言います。優れたネーミングとして有名です(関連記事はこちら)。「可乐」は楽しい、面白いという意味ですが、コーラという意味も持つようになりました(「乐」は「楽」の簡体字)。
このような「好」と動作の組み合わせは味以外のことも表します。似たようなものをまとめて見てみましょう。
【1】 好吃 hǎo chī 「(食べて)おいしい」
【2】 好喝 hǎo hē 「(飲んで)おいしい」
【3】 好闻 hǎo wén 「香りがよい」 ※「闻」は「においをかぐ」
【4】 好看 hǎo kàn 「美しい/きれい」 ※「看」は「見る」
【5】 好听 hǎo tīng 「(聞いて)気持ちがよい」 ※「听」は「聴」の簡体字で「聞く」
いかがでしょうか。こうして見ると中国語のほうがシンプルですね。また、【5】の「好听」はぴったりと対応するこなれた日本語がないので、翻訳する際には「(この歌は)美しい」「きれい(な声だ)」「よい(音楽だ)」のように、文脈に応じて工夫します。
中国語にも「食」や「饮」(「飲」の簡体字)という語はもちろんあります。日本語と同様に「食べる」「飲む」という意味がありますが、話し言葉ではふつう「吃」「喝」を使います。
この「吃」「喝」は、日本語の「食べる」「飲む」と少し違うところもあります。とても有名な例ですと、中国語で薬(錠剤)を飲むことを「吃药」(「药」は「薬」の簡体字)、おかゆを食べることを「喝粥」と言います。
日本語の感覚では「薬を食べる」なんて錠剤をガリガリとかむイメージで、とても苦そうです……。もちろん中国人も錠剤は水といっしょに飲み込むのですが、錠剤は食べる対象ととらえるのですね。なお、水に溶かして飲むような薬はやはり「喝」を使うようです。「おかゆを飲む」感覚というのは、日本語でも「おかゆをすする」と言いますから、こちらはなんとなくわかります。
「食べる」「飲む」は、人間にとって非常に身近なことですから、言語によってそれらを表す言葉の使い方に違いがあるというのは、とても興味深いですね。
photo : “海鲜粥” by Bohan Shen_沈伯韩