こんにちは!liang です。日本語と中国語の単語には、漢字が共通するだけでなく、表す意味も似ているものがたくさんあります。漢字の知識がある日本人は中国語を学ぶうえで有利だと言えるのですが、翻訳などの実務においては、漢字が同じでも表す意味に微妙な違いがある単語の扱いに、注意が必要です。
たとえば英語の water に相当する中国語は「水」です。音は shuǐ(「シュイ」のように発音します)で、日本語の音読み「スイ」にも似ており覚えやすい単語です。
北京で留学生活を始めたばかりのころ、中国人の知人の自宅におじゃましたときに「水を飲むか?」と中国語で聞かれてちょっと戸惑いました。北京の水道水は硬水のため、そのまま飲むと下痢をすると聞いていたからです。「ペットボトルの水のことかな」と思って待っていると、知人が出してくれたのは熱湯でした(余談ですが、留学中に熱いお湯のシンプルなおいしさに目覚めて、今でもお茶の代わりによく飲んでいます)。
日本語の日常的な会話では、水はふつう温度の高くないものを指し、温度の高いものは湯と言いますが、中国語の「水」自体には温度がありません。その点では英語の water に近いかもしれませんね。
温度を明確にする場合、温度の高い水を「热水」(「热」は「熱」の簡体字)、温度の低いものを「冷水」などと言います。あるいは話の前後関係などからその「水」の温度を理解します。
ちなみに中国語の「汤」(「湯」の簡体字)は、ふつうはスープを指します。中国人が日本で銭湯の看板を見て「お金のスープか?」と誤解する、男湯・女湯の表示に驚く……というのはよく聞く笑い話です。
外国語である以上、文字が同じだからといって、それが示す意味も同じとは限りません。翻訳などをするときには、単語の意味を取り違えてしまわないように、十分気をつける必要がありますね。日本人の漢字の知識が、かえって翻訳に悪い影響を及ぼす場合もあるし、中国人が翻訳する場合にも同様の問題があることでしょう。重要な文書の翻訳は、知識や経験の豊富な専門家・業者に任せたほうが安全です。
photo : “Glass of Water” by Greg Riegler Photography