メートル法とヤード・ポンド法

4月 13th, 2012 | Posted by maki in 小ネタ

Mile 0 by Sam Howzit

こんにちは、maki です。前回のエントリーで「平方フィート」や「マイル」といった単位が出てきましたが、アメリカでは日常的に使われている度量衡の単位です。1 フィートは 30.48 cm、1 マイルは 1.609344 km。日ごろ慣れ親しんだ「メートル」でないと、すぐに「ああ、あのぐらいか」という想像がしにくいものです。日本をはじめとする多くの国々ではメートル法を採用しています。これに対し、アメリカでは日常的にヤード・ポンド法を採用しています。この違いが、翻訳のときにもどう扱うべきかをちょっと考えてしまう問題になったりすることもあります。

福島第一原発の事故を機にアメリカ大使館が 80 km 圏内に在住の米国民に対し退避勧告を出したという報道がありました。普段の感覚だと 50 km でも 100 km でもない中途半端な数字なような気もしますが、元々は 50 マイル( = 1.6 km * 50 )というガイドラインに基づく数字だったようです。また、航空機による救援活動に携わる兵士には 112 km 以内への立ち入りにはヨウ素剤の服用を義務付けたという記事もありましたが、これも 70 マイル( = 1.6 km * 70 )ということのようです。アメリカでは、自動車のスピードメーターもマイル表示ですし、60 mph といえば毎時 60 マイル(時速 96 km!)のこと。日本でよく運転をする人でも、アメリカに行ったときは、km 感覚ではなく、マイル感覚でメーターを確認するなど、気を付けないといけないですね。
※ マイル(mile : 略号 = mi)

ヤード・ポンド法では、重さはポンド(pound : 略号 = lb)を使います。1 lb は 453.59237 g です。他にはオンス(ounce : 略号 = oz)も使います。1 lb = 16 oz となります。こうした表示は、アメリカ製の輸入食品のパッケージなんかでよく見かけたりします。16 進数の単位というのも歴史的を感じさせるシステムのように思えます。

近年までヤード・ポンド法はイギリスでも使われていましたが、1995 年にメートル法に変更し、2000 年以降はヤード・ポンド法の使用を禁止しているようです。アメリカでは、法律的にはメートル法を採用しているものの、いまだにヤード・ポンド法が日常的に使われています。

こうした単位をどう翻訳するかというのは悩ましい問題でもあります。先ほどの 50 マイル 圏内の退避勧告は、80 km と訳したほうがわかりやすいでしょう。でも、伝統的にヤード・ポンド法を採用しているゴルフのヤード(yard : 略号 = yd)やボクシングのポンド(パウンド)は、そのままの方がわかりやすいでしょう。だからといって、単位があまりにも混在するのも読みにくい仕上がりになってしまいます。

実際の翻訳案件ではどう訳すべきかに迷うことも多いはずです。お客さまからの指定があればそれに従えばよいのですが、そうでない場合は案件の文書が交わされる業界に応じたスタイルガイドに従うことになります。しかし、そうしたスタイルガイドのない業界もたくさんあります。そんなときに単位をどう扱うかについては、それぞれの翻訳者によって判断は異なると思います。「お客さまからの指定やスタイルガイドがなければ、そのままの単位を残す」という考え方もあるでしょうし、「慣用的な単位に変換し、わかりやすさを重視する」という考え方もあるでしょう。ケースバイケースで臨機応変に対応し、訳者注としてコメントを残すということをされている場合もあります。

スピード翻訳」では、ご発注の際にお客さまから翻訳者の方へのメモを残す機能をご用意しています。このメモ機能を使って、単位をどう扱うかなどのリクエストをお書き添えいただくこともできますので、そうした案件のご依頼の際には、ぜひメモ機能をご利用ください。

おまけ : Google のウェブ検索には、電卓機能があるのはご存知ですか? Google の検索窓には、計算式を入力すると、検索結果の上部に計算結果が表示されます。例えば、2+3 と入力すれば、5 と返ってきますし、2^3( = 2 の 3 乗)と入力すれば 8 と返ってきます。

この電卓機能には単位の換算機能もあって、125 ポンドと入力すれば、56.6990463 キログラムと返ってきます。300ヤードなら 274.32 メートル451華氏なら、232.777778 度(摂氏) と返ってきますよ。大概の単位換算ならできてしまいますね。

photo : “Mile 0” by Sam Howzit


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