映画のタイトルと中国語

6月 2nd, 2015 | Posted by liang in 小ネタ

'Cinema' by Leo Hidalgo

こんにちは!liang です。05/24 までフランスで行われていた第 68 回カンヌ国際映画際では、日本から出品された映画『海街 diary』は賞を逃しましたが、妻夫木聡が出演した台湾の映画『黒衣の刺客』(原題 : 聶隱娘 / 英文 : The Assassin)が監督賞を受賞しました。

監督は侯孝賢(ホウ・シャオシェン)。私はそれほど熱心な映画ファンではありませんが、同監督の『悲情城市』(原題 : 悲情城市)は見たことがあります。

海外の映画のタイトルが日本向けにどのように翻訳されているかは、非常に興味深いものがあります。日本語のタイトルしか知らないまま映画を見ていて、最後に英語の原題がドーンと出てきたときに、「元はこんなタイトルだったのか……」と無意味なショックを受けることもあります。翻訳というより、タイトルをつけ直していると言ったほうが実情に近いかもしれません。

かなり前に『奇跡のシンフォニー』という映画の DVD を見ていて感動し、確かに奇跡のシンフォニーだ!などと思っていたら、最後に August Rush と出てきたので、なんだか複雑な気分でした。もし日本でのタイトルが『オーガスト・ラッシュ』ならこの DVD は借りなかったと思うので、うまいタイトルだと思います。映画の原題に注目するきっかけになりました。

映画のタイトルというのは商品名なのですから、マーケティングを担当する人が、対象とするマーケットに合わせて考えるのでしょう。タイトルを決める際、原題に忠実であることよりも、売れることのほうが重要だと考えるのは当然ですね。

さて、中国でも多くの外国映画が上映されています。そのマーケットの大きさゆえに、映画産業にとって、中国における興行は非常に重要なものになっているようです。

そんな中国マーケットで成功するために、どんなタイトルが選ばれているのでしょうか。いくつか見てみましょう。
※ 以下は中国(大陸)の状況です。香港、台湾は、商圏や言語が異なるので翻訳等にも相違が見られます

速度与激情 7

この映画は今年 4 月に公開され、中国映画史上の最高興収記録を達成したそうです。日本語タイトルはなんでしょう? 『ワイルド・スピード SKY MISSION』です。

ちなみにこの「」という中国語は書面語(書き言葉)で「~と」という意味で、英語なら and です。映画や本のタイトルによく出てくるので覚えておいても損はありません。中国語のタイトルのほうが原題(Fast & Furious 7)に近いですね。

日本では同時期公開の『ドラゴンボール Z 復活の「F」』と『名探偵コナン 業火の向日葵』に及ばなかったようですが……。

冰雪奇缘

去年、世界中で大ヒットしたあの映画です。すぐわかりますか?「冰雪」でおわかりになりますよねよ。はい、これは 『アナと雪の女王』です。「冰雪」は氷と雪、「奇缘」は不思議な縁という意味です。日本でも中国でも、原題 Frozen の直訳では売れないという判断ですね。

好評だった主題歌『レット・イット・ゴー ~ありのままで~』の中国語(普通話)バージョンのタイトルは『随它吧 Suí tā ba』で、直訳すれば「それに従いなさい/任せなさい」というような意味です。

超能陆战队(超能陸戦隊)

これはなんでしょう? 『冰雪奇缘』と同じく「迪士尼」(ディズニー)のアニメ映画、『ベイマックス』です。原題が Big Hero 6 ですから、日本語のタイトルよりは近いと言えますね。

ベイマックスは映画に登場するロボットのことですが、中国語だと「大白」。見たまんまです。これをそのままタイトルにするのは厳しいだろうなと思います。逆に『ビッグヒーロー 6』みたいなタイトルは、膨大な量の漫画・アニメに触れている日本の子どもには「刺さらない」ということなんでしょうか。とはいえ、ベイマックスと主人公の少年の心温まるストーリーだけを想像させる日本のプロモーションはどうかなーと思うところもあり、中国語タイトルの『超能陆战队』(超能陸戦隊)の方が正しい気もします。

赤壁

知っている人ならすぐにわかりますね。『レッドクリフ』です。外国映画ではなく中国の映画ですから、これが原題です。日本語のタイトルも『赤壁』でよさそうですが、一部の三国志フリークを除けば、「赤壁」なんてふつうは知らないでしょう。「あかかべ」なんて読んでしまうかもしれませんね。というわけで英語の Red Cliff から日本語タイトルを付けたのは正解だったと思います。

いかがでしょうか? 世界的に有名な映画の話題は、中国人との雑談の中でもよく出てくるものです。自分の好きな映画のタイトルは中国語でなんと呼ぶのか、知っておくと便利だと思いますよ!

おまけ :洋画の場合は、最近は単純にカタカナ表記だけするという作品も増えてきていると思います。一昔前(1982)は、『愛と青春の旅だち』(原題 : An Officer and a Gentleman)がかなりギャップのある邦題でした。スピルバーグ作品で、『続・激突!/カージャック』(1974)という映画もありました。これはスピルバーグの 1971 年の第一作『激突!』(原題 : Duel)の続編……でもなんでもなく、スピルバーグ作品ではありますが、まったく無関係のストーリー。原題は、The Sugarland Express でした。極めつけは、『死霊の盆踊り』(1965)。原題は、Orgy of the Dead。一応、死霊たちが踊るのですが、盆踊りではありません。完全にウケ狙いですね。まあ、『死霊の~』、『悪魔の~』はホラー映画にはありがちな邦題ですけどね。「スピード翻訳」では、さすがにこうした邦題の翻訳はいたしかねます……。ご容赦ください。m( _ _ )m


You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 Both comments and pings are currently closed.