東西ってどんなモノ?――中国語の東西南北

9月 1st, 2014 | Posted by liang in 小ネタ

'東南西北 中發白' by PhotoInko

こんにちは!liang です。方角を表す「東」「西」「南」「北」は日中で共通する語ですが、「房東」という漢字を見て、どんな意味を思い浮かべますか?

ヒント:中国語の「」は建物、部屋などといった意味があります。……どうでしょうか? わたしが中国語の「房东」(「」は「東」の簡体字)を最初に見たときには、単純に建物の東側のことだと思いました。

正解は家主、大家の意味です。賃貸アパートの大家さんも「房东」です。また、株式会社の株券は中国語で「股票」と言いますが、株主は「股东」です。なぜ「」なのでしょう。

中国語「东」には「あるじ、主人」という意味もあるのです。日本語の感覚だとぴんと来ませんね。昔、主人は東側、客は西側に位置した(座った)ことから来ているのだそうです。ほかに「宾东」(客と主人。「」は「賓」の簡体字)、「店东」(店主)といった語もあります。

また、「东西」という語もあります。「dōng」(「ドンシー」のように発音)と読めば日本語と同じく「東と西」の意味ですが、「dōngxi」(「ドンシ」のように発音)と読むと「モノ」の意味で、英語 thing の訳語にもなります。「買い物(をする)」は「买东西」です(「」は「買」の簡体字)。この「东西」は口語で大変よく使われますので、覚えておいて損はありません。なお、モノを表す「东西」の語源には諸説あるようです。

中国語「指南」は指針という意味です。日本語でも使う言葉なので分かりやすいですね。書名などで《~指南》のように用いると、『~の手引き』『~ガイド』の意味になります(《 》は書名を表す)。中国の書店で旅行ガイドを探すときは「~旅游指南」が目印です。ちなみに、この「指南」は「指南车」から来ているのだそうです(「」は「車」の簡体字)。

败北」(敗北)の「」はどういう意味なのでしょうか。『現代漢語詞典第 6 版』(商務印書館)によれば「」はもともと二人が互いに背を向けるという意味であり、戦争で負けて、敵に背を向けて逃げることを「败北」と呼んだのだそうです。

『広漢和辞典』(大修館書店)の「北」の項には「…人は多くの場合、明るい南方に面して坐立するので、そのとき背にする方が、きたであるところから、北方の意を表す」とあります。中国では「北極星」を「天の中心」と見立てた……という思想に由来するようですね。「天子南面」という言葉があります。これは、皇帝は「天の中心」、つまり「北極星」であると見立てて、北に配置されます。つまり「天子する」わけです。家臣はその皇帝を南側から見上げるという意味で「臣下北面」と言います。

さて、中国語では「方角」の意味でよく「东南西北」と言いますが、日本語ではふつう「東西南北」と言いますよね。順番が違います。中国語の「东西南北」には四方八方、あらゆる場所といった意味があるので、方角というよりも広がりのイメージになるのでしょうか。東西と南北はそれぞれ対立する概念ですから、「春夏秋冬」で季節を表すのなら、方角は中国式に「東南西北」で表すほうが合っているような気もします。

マージャンをやる人は東南西北(日本のマージャン用語で「トン・ナン・シャー・ペー」と読む)という並びに違和感はないかもしれません。中国語では「ドン・ナン・シー・ベイ」のように発音します。

ところで、わたしが「房东」を見て意味が分からなかったように、中国人が日本語の「男前」を見ても、最初はきっと分からないでしょうね……。

photo : “東南西北 中發白” by PhotoInko


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