台湾に「ひらがな」がある?!~中国語の入力方法、あれこれ。

6月 11th, 2014 | Posted by xiaofan in 小ネタ

'taipei sign' by Connor Walsh

大家好! すでに夏の様相を呈している台北から xiaofan です。前回「スマートフォンで効率よく韓国語や中国語を入力!」として、ハングルと中国簡体字の入力についてご紹介しました。同じ中華圏ですが、ここ台湾の入力方法はちょっと違います。中国語学習というと、前回ご紹介したローマ字を使って音を表すピンイン(拼音)がよく知られています。ただ実はあれ、中国大陸で編み出された音声の表記方法で、現在台湾の学校教育では使われていません

台湾の代表的な入力法として、まず注音符号(中文:注音符號)という独自の音声表記があげられます。ボポモフォ(ㄅㄆㄇㄈ、bpmf)ともいわれ、一般的に今の子どもたちの学習はここから始まります。台湾式ひらがなともいえる注音符号は、日本語のひらがなカタカナと同じように、漢字を出発点にして作られた表音文字で、全部で 37 字あります。

注音符号は、日本のふりがなと同じ機能を持っているため、街中のあちこちで見かけます。冒頭の写真 ※ のように標識のふりがなとして用いられていたり、あるいは書店の棚の並びがボポモフォ順になっていたり、携帯電話にはボポモフォ入力しかできないものもあります。そういえば、台湾で最も有名な中国語教育のテキスト『實用視聴華語』にはピンインとボポモフォが同じように記されています。ドラマの字幕にだって登場するくらいですから、台湾の生活には欠かせない文字といえます。
※ 写真のボポモフォが見えにくい場合は、写真をクリックしてください。漢字の隣に小さくボポモフォが書かれているのがわかるでしょう

'kbd_tw01' by Maki

ではその注音符号、実際の iPhone の画面で見てみましょう。左の緑色の部分が子音、右の赤い部分が母音にあたり、入力する際はそれらを組み合わせながらローマ字入力のように入力していきます。たとえば台湾の総統・馬英九の場合、簡体字ピンインでは「Mǎ Yīngjiǔ」と表します。ボポモフォは、ひらがなというよりは、ローマ字に近い書き方の表音文字です。たとえば、「馬」は「ma」という読み方です。「m」に相当する子音は「」で、「a」に相当する母音は「」となります。「ㄇㄚ」で「ma」となります。こんな感じで、「馬英九」を注音符号に置き換えてみましょう。
※ 実際には、キーボードに色はついていません

馬英九 → ( ㄇㄚ ) + ( 候補選択 ) + ( ㄧ ㄥ ) + ( 候補選択 ) + ( ㄐ ㄧ ㄡ ) + ( 候補選択 )2 + 1 + 2 + 1 + 3 + 1 = 10
※ Windows では、上記の例の「」が「|」のように表示され、前掲のキーボード画像にはこの文字がないように見えますが、「一」に見えるキーに相当します。縦書きと横書きの場合では、文字の形が違います。日本の長音記号と同じルールですね

となります。

台湾などで使われている繁体字は、ピンインでも入力できますので、試してみると、

馬英九 = Mǎ Yīngjiǔ → ( m a ) + ( y i n g ) + ( j i u ) + ( 候補選択 )2 + 4 + 3 + 1 = 10

となり、

馬英九 = Mǎ Yīngjiǔ → ( m ) + ( y ) + ( j ) + ( 候補選択 )1 + 1 + 1 + 1 = 4

という前回の記事でもご紹介したピンインの頭文字だけで入力する方法でも予測変換候補を得ることができました。

ボポモフォから話がずれてしまいましたが、このように注音輸入法でも 10 回の操作で入力ができました。ピンインからの変換だと、予測変換機能を利用して、簡単に入力できるのですが、注音符号だと、ㄇㄚ と入力したところで、変換候補から 1 文字を選択しなければなりません。ㄇㄚㄧ のように 3 文字入力すると、「馬英九」という予測変換候補が出てくれるのであれば、とても便利ですよね。でも、iPhone でも Android でもボポモフォは単漢字変換はできますが、予測変換はできないようです。

'kbt_tw02' by Maki

さて。台湾にはピンイン、注音符号以外にも倉頡(そうけつ)という入力法があります。実質的には注音符号を使う人のほうが多いのですが、30 代後半から 40 代前後の世代では今なお使われている入力法です。なお、その下の世代が注音符号を使って文字を入力していることになります。台湾のほか、繁体字を使う香港マレーシアでも使用されているとか。倉頡入力法が根本的にピンインや注音符号と異なるのは発音とは関係ないという点です。これは日本にはない入力法ですが、部首の組み合わせで入力することから、漢和辞典の部首検索を進化させた方法といっていいかもしれません(こじつけ??)。ここで、ほかの入力法と比べながら台湾総統の名前を入力してみます。

例 : 馬英九
ピンイン = ( m a ) + ( y i n g ) + ( j i u ) + ( 候補選択 )
ボポモフォ = ( ㄇ ㄚ ) + ( 候補選択 ) + ( ㄧ ㄥ ) + ( 候補選択 ) + ( ㄐ ㄧ ㄡ ) + ( 候補選択 )
倉頡 = ( 尸 手 尸 火 ) + ( 候補選択 ) + ( 廿 中 月 大 ) + ( 候補選択 ) + ( 大 弓 ) + ( 候補選択 ) = 4 + 1 + 4 + 1 + 2 + 1= 13

この方法のメリットとしては発音がわからなくても形から類推していけることでしょう。その際、尸 手 火 廿 中 月 大 など全 26 種類の意味(用法)を理解しておくことは必須ですが、日本人にとっては、水 = さいんずい、手 = てへん、人 = にんべん、など馴染みのあるものも含まれているので、日本人中国語学習者には比較的習得しやすい入力法かもしれません。何より、手書き入力の登場で解消されつつあるとはいえ、意味を表す漢字学習の最大の関門は「発音がわからないと探せない」、この点に尽きるのではないでしょうか。あるいは、倉頡で入力して発音を調べる、というのも一案かもしれません。

大陸ならピンイン、台湾なら注音など、どこの中国語を勉強したいかによって入力方法を変えるのもいいでしょうし、あるいは音の習得が苦手な方は倉頡と選択肢を広げてみるのもオモシロいでしょう。いろいろ試すと中国語の漢字への理解がいっそう深まること間違い無し。ピンイン以外の方法もぜひお試しあれ!

あ、ボポモフォのキーボードだと、左端のキーが上から順に「ㄅㄆㄇㄈ」(bpmf)と並んでいるんですね。英語のパソコンやスマートフォンのキーボードのいちばん上の行にならんでいる Q W E R T Y から生まれた QWERTY という単語にとても似てますね。

繁体字どころ台湾から xiaofan でした。再見囉~!

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